
「明治日本の産業革命遺産」世界文化遺産登録10周年記念企画展 「幕末維新のエネルギー ―近世肥前の石炭史―」を開催します
石炭は、日本の近代化から高度経済成長期にかけての発展を主要なエネルギー源として支え続けました。現在の佐賀県北部から西部にかけては唐津炭田が、また佐賀藩の飛地のあった長崎県の西部には西彼杵炭田があり、唐津炭田は幕末維新期に日本最大の石炭産出量を誇りました。また、西彼杵炭田の高島炭鉱などは国内を代表する炭鉱の一つとして著名であり、現在では近隣の端島(軍艦島)と共に「明治日本の産業革命遺産」構成資産の一部となっています。その高島炭鉱を舞台に、日本初の鉄製大砲鋳造や実用蒸気船建造に成功した佐賀藩がいちはやく近代的洋式採炭技術を導入するなど、幕末維新期の肥前 (現在の佐賀県・長崎県)は日本の石炭産業史において極めて重要な地域でした。
令和7年7月5日、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」はユネスコ世界文化遺産登録10周年を迎えます。本展覧会はこれを記念し、日本の産業革命を支えるエネルギー源となった、近世から幕末維新期における肥前地域の石炭産業の姿を紹介します。
1 会 期 令和7年7月4日(金曜日)~9月7日(日曜日)
2 開館時間 9時30分~18時00分
3 休 館 日 なし
4 会 場 佐賀県立佐賀城本丸歴史館 御小書院(特別展示室)
5 協 力 佐野常民と三重津海軍所跡歴史館
6 観 覧 料 無料
7 主な展示資料
「御屋形日記」(多久市郷土資料館蔵・佐賀県重要文化財)/「肥前国長崎県東松浦郡村誌」(県立図書館蔵・佐賀県明治行政資料)/「肥前国産物図考」(県立博物館蔵・佐賀県重要文化財)/「炭鉱絵馬」(武雄市蔵・武雄市重要有形民俗文化財)/「小城藩日記」(佐賀大学附属図書館蔵)/「三重津海軍所跡出土石炭」(佐賀市蔵)/「松乃落葉」(個人蔵・佐賀城本丸歴史館寄託)/「高島石炭坑記」(公益財団法人鍋島報效会蔵・県立図書館寄託)
8 関連イベント
(1)第245回歴史館ゼミナール「石炭と蒸気船
―幕末の燃料事情―」
日時 令和7年7月26日(土曜日) 13時30分~15時
会場 佐賀城本丸歴史館 外御書院
講師 坂本 卓也(佐賀大学地域学歴史文化研究センター 研究員)
料金 無料(事前申込不要)
(2)第246回歴史館ゼミナール「幕末維新のエネルギー
―近世肥前の石炭史―」
日時 令和7年8月23日(土曜日) 13時30分~15時
会場 佐賀城本丸歴史館 外御書院
講師 都留 慎司(本館学芸員)
料金 無料(事前申込不要)
(3)学芸員によるギャラリートーク
日時 令和7年7月20日(日曜日)・8月1日(金曜日)・8月30日(土曜日)
8月1日:11時40分~12時/ほか14時~14時30分
会場 佐賀城本丸歴史館 御小書院(特別展示室)
※事前申込不要
(4)蒸気車実走ショー(佐賀城本丸夏休み関連イベント)
日時 令和7年8月10日(日曜日) (1)11時00分~ (2)13時30分~ (3)15時30分~
会場 佐賀城本丸歴史館 御玄関前広場
内容 佐賀藩の精煉方で造られた蒸気車雛形の復元模型が蒸気の力で走行します。
※雨天時中止
※イベント等についての詳しい内容は、佐賀城本丸歴史館HPをご覧ください。
(https://saga-museum.jp/sagajou/)
【参考】主な展示資料

肥前国産物図考 [佐賀県重要文化財]天明4年(1784)/佐賀県立博物館蔵
唐津藩水野家の家臣木崎攸軒盛標(きざきゆうけんもりたか)が、唐津藩における代表的な産業の姿を絵と詞書を交えて紹介したもので、第七帖には石炭産業の様子が描かれています。具体的な挿図と解説を交えて石炭産業の姿を説明しており、江戸時代の炭鉱における生産過程を詳細に伝えています。

炭鉱絵馬 [武雄市重要有形民俗文化財]慶応元年(1865)8月/武雄市蔵
大崎村(現在の武雄市大崎町)の大副山(おおぞえやま)は古くは宝暦年間(1751~64)頃から石炭採掘が行われていましたが、この絵馬は大副山の付近にあった大崎八幡社に、炭鉱の繁栄と坑夫の安全を祈願するために奉納されたものです。実在した幕末佐賀の炭鉱の姿を現在に伝える貴重な資料であり、石炭採掘で賑わう炭鉱や地域の様子を生き生きと描写しています。
三重津海軍所跡出土石炭(幕末~明治初期)/佐賀市蔵
佐賀藩の蒸気船運用の拠点となった三重津海軍所跡では、燃料の石炭も発掘調査によって出土しています。貯蔵用の大塊から蒸気船へ積み込むために小割された小片まで総計60kg以上に及びます。出土した石炭は、三池炭田(福岡)や西彼杵炭田(長崎)の成分に近いものであったことが自然科学分析により確認されています。