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令和2年 2月19日令和2年2月定例県議会 知事提案事項説明要旨

最終更新日:

 令和2年2月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 昨年8月に発生した「令和元年佐賀豪雨災害」から、間もなく半年になります。災害からの復旧・復興に向けては、これまで13回にわたり復旧・復興推進本部会議を開催し、被災された方々に寄り添いながら全庁を挙げて取り組んでまいりました。
 また、被災者支援のために寄せられた義援金は4億9千万円を超え、市町を通じて順次配分いたしております。被災者の困りごとや不安に対しては、県内外のCSOで構成する「佐賀災害支援プラットフォーム」を中心に、ボランティアの皆様によるサポートを続けていただいております。被災者のことを想い、ご支援いただいている全ての皆様に心から感謝申し上げます。
 公共土木施設などの復旧に向けては、災害復旧事業の着手に必要な災害査定が全て完了し、土砂崩れにより全面通行止めとなっていた国道385号が昨年末に開通するなど、順次、復旧を進めています。また、大町町の油が流出した地区では、農地の土の入れ替えを行うなどにより今年からの営農再開を目指しており、被災したきゅうりハウスについては、近隣での新たな園芸団地の整備を支援してまいります。中小企業者などに対しては、設備更新にかかる経費への補助や低利融資を通じて事業の再開を後押ししてまいりました。復旧・復興に向けては、これまで、「ひとりひとり」、「血を通わせる」、「最後の一人まで」という想いで、全力で取り組んでまいりました。
 およそ30年前にも今回と同じような災害を経験していたにもかかわらず、その教訓を活かしきれなかったという反省の上に立ち、今後はこれを教訓化し、活かしていくことが重要と考えます。地球規模の異常気象などによって様々な災害が起こりうることを強く認識し、断固たる決意を持って日頃から対応能力の向上に取り組んでまいります。
 浸水被害が特に大きかった六角川や牛津川においては、今回の災害を検証し、低平地が広がる本県の特性を踏まえた治水対策に重点的に取り組むこととし、昨年12月に、「六角川水系緊急治水対策プロジェクト」を国や流域市町と共に取りまとめております。このうち遊水地の整備や河道掘削、排水ポンプの増強などの大規模ハード事業については、国に求めていた「河川激甚災害対策特別緊急事業」に採択され、5年間で総額約400億円の治水対策を実施することとしています。こうしたハード面の対応に加え、情報収集機能の強化などにより被災直後から効果的なオペレーションが展開できるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
 昨年12月以降、中国・武漢を中心に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症については、庁内に情報連絡室を設置し、患者の発生状況や感染防止対策などについて情報共有を図っています。また、各保健福祉事務所に相談窓口を設置し、感染が疑われる場合には診療体制の整った医療機関に確実につなぐなど、県内での患者の発生に備えた体制を整えております。
 次に、「令和元年度ふるさとづくり大賞」の受賞について申し上げます。
 ふるさとへの情熱や想いで活力ある地域を創り上げている団体として、「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」が、日本一となる最優秀賞に輝きました。鹿島酒蔵ツーリズムは、鹿島から世界一の酒が生まれたことをきっかけに、酒蔵が建ち並ぶ歴史ある街を活かして人を呼び込もうと8年前に始まった取組で、来訪者数は初回の3万人から年々増加し、今では10万人に達しようとするほどの人気を呼び、定着しています。日本酒だけでなく、食や酒蔵見学など訪れる方を楽しませる工夫があり、その盛り上がりは隣接する嬉野エリアなどにも広がっています。「鹿島には日本酒がある」という地域への誇りを生み、移住者が中心となったゲストハウスのオープンなどの動きにもつながっているこの取組は、まさに「自発」が「自発」を呼ぶものであり、こうした取組が全国的に評価されたことを大変嬉しく思っています。魅力ある街づくりをすることによって、世界から人を呼び寄せることができると、改めて感じることができました。こうした地域の動きを、これからもしっかりと後押ししてまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、SAGAサンライズパークの整備についてであります。中核施設であるSAGAアリーナの整備については、昨年11月議会における附帯決議を重く受け止め、組織体制を強化するとともに、不落の原因を検証し、建設市況を調査・分析して設計の見直しを行ってまいりました。その上で改めて入札を実施し、今月6日に新築工事を請け負う共同企業体が決定いたしました。今議会に、このアリーナの新築工事と併せて、電気設備工事や機械設備工事の請負契約に係る議案及びアリーナを含むSAGAサンライズパークの管理者を指定する議案を提案しています。SAGAサンライズパークは、佐賀の未来にとって大きな価値を生み出すものと考えており、その一歩として、令和5年の国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会の本県での開催に向け、しっかりと取り組んでまいります。また、「令和元年佐賀豪雨災害」をはじめとする近年頻発する災害を踏まえ、アリーナを、平時には自主防災組織の活動の場として、災害時には避難所としての機能を有する防災拠点としても整備することといたしました。その部分の財源として、元利償還金の7割が地方交付税で措置される緊急防災・減災事業債を活用できることとなります。引き続き、国庫補助金や民間の助成金の活用など財源の確保に努めてまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
 将来の新鳥栖-武雄温泉間のあり方については、国土交通省が考えている「幅広い協議」がどういうものなのか確認を行っているところです。協議の入口で最も確認したいのは、この協議が、与党検討委員会が求めている「フル規格を実現するための協議」ではないということですが、現時点では、このことについての明確な回答は頂いていないと考えています。協議に当たっては、西九州ルートに係るこれまでの合意事項やその経緯などを踏まえ、誠意をもって真摯に佐賀県と向き合っていただきたいと考えており、今議会における議論を踏まえながら、国土交通省の「幅広い協議」に対する考え方について、しっかり確認するなど、佐賀県の将来に影響することから、丁寧に対応してまいります。
 次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
 防衛省からの要請については、県議会での議論や決議において、さらには有明海漁協をはじめ多くの関係者から、まずは県が判断すべきだとの意見を頂いたことも踏まえ、平成30年8月に、県としては、「防衛省からの要請を受け入れ、公害防止協定覚書付属資料の変更について有明海漁協と協議をさせていただく」という判断をし、有明海漁協に対して協議の申し入れを行いました。昨年8月には、事業主体である防衛省から有明海漁協に対して説明が行われ、9月からは、支所ごとの説明会が順次開催されています。現在、漁業者の皆様は、ノリ漁の最中であり、今後、そうした状況を見ながら、防衛省による説明会がまだなされていない3支所でも開催され、漁協内での議論が進むよう引き続き調整してまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟については、開門を命じた確定判決を、漁業権の消滅という形式論で無効化した福岡高裁判決を、昨年9月に最高裁が破棄し差し戻しています。これを受け、福岡高裁において今月21日から口頭弁論が予定されており、訴訟の進行に係る協議も毎月開かれると聞いています。当事者としっかり意見交換をしていただき、有明海の現状を踏まえ、漁業者の皆さんの想いを受け止めた審理が行われることを期待しています。
 有明海の水産資源については、再生のシンボルであるタイラギが8年連続で休漁となるなど厳しい状況が続いています。このため、二枚貝の復活に向けた人工稚貝の放流を、昨年10月のウミタケに続き、今年1月にはタイラギやアゲマキで実施いたしました。稚貝が成長し、資源の回復につながるよう取り組んでまいります。
 宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。開門調査の実現は極めて厳しい状況が続いていますが、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わっていません。今後も訴訟の状況や国の動向を注視し、関係者と意見交換をしながら全力で取り組んでまいります。
 次に、原子力発電について申し上げます。
 九州電力が計画している玄海原子力発電所3号機の使用済燃料貯蔵プールの保管容量を増やす「リラッキング」については、提出された事前了解願いの判断を行うため、県において原子力規制委員会の審査内容を確認しているところであり、また、貯蔵プールから取り出した燃料を保管するための「乾式貯蔵施設」の設置については、規制委員会の審査が行われています。航空機の衝突などのテロに備えた「特定重大事故等対処施設」については、3号機は令和4年8月、4号機は9月の設置期限までに完成するよう、九州電力において必要な手続きと工事が進められています。また、重大事故が発生した場合の指揮所となる「緊急時対策棟」については、令和5年9月の完成を目指し、今年の早い時期に工事計画認可申請を規制委員会に行うと聞いています。3、4号機が、平成30年の再稼働から間もなく2年を迎えようとする中、九州電力に対しては、常に緊張感を持って慎重の上にも慎重に安全対策に取り組むことを求めています。先月22日に九州電力の池辺社長が来訪された際には、「九州電力は佐賀の地場企業」という発言があり、私からは、地場企業として県民の声にしっかりと耳を傾けていただきたいと申し上げるとともに、原子力発電については、

  • 県民の厳しい目が向けられていることをしっかりと受け止め、更なる安全対策を進めていくこと
  • 現場だけでなく、会社を挙げて、何事にも気を引き締めて取り組むこと

を強く要請いたしました。玄海原子力発電所とは、廃止措置が決定している1号機、2号機を含め、長い年月にわたり関わり続けなければいけません。今後とも、九州電力の安全に対する取組を注視していくとともに、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 次に、城原川ダム事業について申し上げます。
 令和2年度政府予算案においては、今年度予算の約1.3倍となる9億1,700万円が計上されており、4月には、城原川ダム建設を推進するため国土交通省において佐賀河川事務所が新設され、人員体制も強化されることとなっています。城原川ダムは建設段階に移行して3年目を迎えますが、現在実施されているダム本体や付替道路などの調査・設計に加え、初めて水没地域の補償に必要となる現地での用地調査が盛り込まれ、工事用道路の敷設も予定されるなど、ダム建設の具体化に向けて事業の進捗が図られることとなりました。県としては、地域の治水対策の推進のため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。あわせて、水没予定地域の長年にわたる不安にしっかりと寄り添い、住民の皆様が将来を思い描いていけるよう、国や神埼市と連携し、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
 次に、平成30年2月に陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプターが神埼市の住宅に墜落した事故について申し上げます。
 防衛省は、事故後においては同型ヘリの飛行を停止していましたが、昨年9月に事故原因及び再発防止策を示し、11月から三重県の駐屯地で飛行を再開していました。今月14日には、岩田政務官が来訪され、再発防止策に基づく機体の点検や操縦士の訓練など準備が整ったとして、県内での飛行を再開する方針が示されました。私からは、地元の皆様の想いにしっかりと寄り添うとともに、再発防止策を徹底するよう強く申し入れました。このような事故は二度とあってはなりません。防衛省には、今回の事故を風化させることなく、安全対策に万全を期すよう求めてまいります。
 続きまして、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
 先月開催された全国都道府県男子駅伝で、佐賀県チームが大会新記録の快走で4位入賞を果たしました。代表チームの監督として最後の指揮と話された古川監督の下で一つになり、中高生の頑張りにチーム全体が奮い立った姿に、応援する県民の皆様も大きな力をもらったと感じました。この夏開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けては、テコンドーの濱田真由選手や、セーリングの岡田奎樹選手、南里研二選手など本県ゆかりの選手の応援をはじめ、県民の皆様に、スポーツの力の素晴らしさを身近で感じていただけるよう、県内でも、フィンランドをはじめ5か国の事前キャンプを予定し、聖火リレーでは、県内全ての市町を巡るようコースを工夫しています。オリンピック・パラリンピックの盛り上がりを、本県での国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会の成功につなげてまいります。国民体育大会から国民スポーツ大会へ名称が変わる初めての大会となる佐賀での開催に向けては、大会の愛称とメッセージを、「SAGA2023(にいまるにいさん)」、「新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。」に決定し、これまでにない形に一新しました。「スポーツだからできること」にスポットを当て、選手だけでなく、支える人も、観る人も、それぞれのスタイルで楽しみ、すべての人に感動とチカラを与える大会を目指してまいります。
 また、「SAGA2023(にいまるにいさん)」の開催後も見据え、トップアスリートや指導者の育成、就職支援、練習環境の充実に取り組むSAGAスポーツピラミッド構想の推進に力を入れています。練習環境の充実に向けては、全国屈指のレスリングの強豪校に成長した鳥栖工業高校において、県内の練習拠点となるレスリング場を整備することとし、伊万里商業高校でのホッケー場や多久高校でのクライミングウォールなど、順次、整備を進めてまいります。
 次に、「アジアベストレストラン50」について申し上げます。
 3月22日から24日の3日間、アジアのトップシェフをはじめ、ホテル、レストランなどの関係者が参加するこの祭典が、日本で初めて佐賀県で開催されることは、本県が飛躍する大きなチャンスと考えています。この機会を利用して、佐賀牛、いちごさん、嬉野茶、日本酒などを味わい、有田焼、唐津焼などの魅力に触れる7つのツアーを用意し、佐賀のブランドをアジアに広めていきたいと考えています。これに先立ち唐津市で開催する「SAGAガストロノミー会議」と併せて、佐賀が誇る食材や器などと料理人とのつながりを生み出し、新たなビジネスの創出につなげてまいります。
 次に県産品のブランド化に向けた取組について申し上げます。
 デビュー2年目を迎えた県産いちごの新品種「いちごさん」は、今季の出荷量が4倍に増加する見込みで、品質も市場から高い評価を頂いています。車内でいちご狩りやスイーツを楽しめる「いちごさんバス」を1月に東京都内で運行したところ、多くの注目を集め、複数のメディアに全国枠で取り上げていただきました。また、東京や大阪の市場関係者に対して、私から直接、「いちごさん」の魅力をPRしてまいりました。引き続き、消費者と市場関係者の両面へのプロモーションに力を入れ、それぞれの評価が相まってブランドイメージの定着につながるよう取り組んでまいります。
 また、本県が独自に開発した柑橘類の新品種「佐賀果試35号」について、令和3年春の市場デビューに向け、ネーミング、ロゴデザインを開発することとしています。プチプチッとした食感とジューシーさが際立つ、これまでにないようなフルーツの誕生をしっかりと売り込み、世界に向けたトップブランドへと育ててまいります。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 佐賀県の令和2年度当初予算につきましては、引き続き、「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を基本理念に、人が基軸の県政を進めてまいります。人の痛みに敏感な県政、災害に強い県土づくりに力を入れるとともに、本県が飛躍するための鍵となる交流の促進や新たな価値を生み出す取組に積極的にチャレンジしてまいります。これまで取り組んできた「県民の命を守る」、「人の想いに寄り添う」、「子育てし大県を推進する」、「さがの未来につなげる」といった分野の施策を推進し、これらの施策を支える基盤として「社会資本整備」を着実に進めてまいります。このうち、災害からの復旧・復興と安全・安心の確保に向けては、国の経済対策も活用しながら、河川や道路の防災対策などに積極的に取り組んでまいります。
 令和2年度当初予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計  4,855億8,100万円
特別会計  約1,904億  100万円

となり、一般会計を前年度当初予算と比較すると、約367億円の増、率にして約8.2%の増となっています。この主な要因は、SAGAサンライズパークの整備、九州佐賀国際空港のターミナルビルの拡張、消防防災ヘリコプターの導入、六角川水系の緊急治水対策の実施など、将来を見据えた取組を積極的に進めることによるものです。
 一般会計の予算額は、平成13年度当初予算以来の規模に増加しておりますが、2月補正も踏まえた県財政の収支見通しは、これまでの試算と大きな変動はないものと見込んでいます。予算規模は令和3年度にピークを迎え、財政の健全度を示す指標の一つである将来負担比率は、平成30年度に全国で良い方から4位であったものが、「佐賀県総合計画2019」の最終年度である令和4年度には10位程度となるものの、財政の健全性は維持できるものと考えています。引き続き、未来を見据えて県勢発展のために投資すべきときは投資し、財政規律に配慮した県政運営に努めながら、県政を前へと進めてまいります。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 まず、「県民の命を守る」予算についてです。
 災害発生時の情報収集などの迅速な初動や人命救助に対応する消防防災ヘリコプターの導入につきましては、令和3年3月の運航開始に向け、今年4月に県内消防本部から派遣される消防職員を中心とした防災航空隊を発足させ訓練を始めることとしています。また、12月のヘリコプターの配備に合わせて、活動拠点となる防災航空センターを九州佐賀国際空港の隣接地に設置するため、誘導路、駐機場の舗装及び格納庫・事務所の建築工事を予定するなど、本県の防災力の充実・強化に向けて着実に準備を進めてまいります。
 次に、自宅で人工呼吸器を使用されている方の安全を守る取組についてです。障害や慢性疾患などにより自宅で人工呼吸器を使用している方については、災害時に停電した場合、多くの方が持っている予備のバッテリーでは、電源が最大でも24時間ほどしかもたないという不安があります。このため、救助が来るまでの間、停電から72時間は電源が確保できるよう、全ての方を対象に非常用電源の購入を支援することで、人工呼吸器を使用している方々の災害時における命をつなぐ取組を進めてまいります。
 次に、「人の想いに寄り添う」予算について申し上げます。
 難聴の子供たちについては、知事に就任した直後の平成27年度から、国の支援制度が受けられない軽度・中度の難聴を対象に補聴器の購入を支援してまいりましたが、その対象は両耳が難聴の場合に限られていました。しかし、片耳が難聴の場合でも、登下校時の安全や、コミュニケーション、学業などに支障があるという声をお聴きしたことから、新たに片耳難聴を支援の対象に加えることとし、併せて、高額な負担を伴う人工内耳体外機の更新費用などを対象経費に追加することといたしました。補聴器を装着している全ての子供たちを対象とすることで、言語習得や教育において重要な時期にある子供たちの成長を支えてまいります。
 次に、小児・AYA世代と呼ばれる40歳未満の若年世代のがん患者の方々に対する支援についてです。この世代は、がん治療の影響によって妊娠・出産に必要な機能が失われるという不安を抱いている方が多くいらっしゃいます。そこで、子供を産み育てることを望む方々を対象に、精子や卵子の凍結保存などの妊孕性(にんようせい)温存治療を受ける際の治療費を助成することといたしました。若くしてがんになった場合でも、将来、子どもを産み育てるという希望を持ってがん治療を受けることができる環境を整えてまいります。また、小児・AYA世代の末期がん患者の在宅での療養については、介護保険などの対象にならないことから患者及び家族の身体的・経済的な負担が大きい状況になっています。このため、訪問介護の利用や福祉用具の購入などに係る費用を助成することとし、在宅での療養を支援してまいります。
 次に、予防接種の再接種が必要な子供たちの支援についてです。白血病などの小児がんで造血細胞移植を行った場合、麻しん、風しん、日本脳炎などの予防接種で得ていた免疫が失われ、感染症の発症や重症化するリスクがあります。再び免疫を得るためには、予防接種の再接種が必要となりますが、最初の予防接種は無償でできたものが、再接種の際には全額が自己負担となり、精神的に辛い中で経済的な負担までも強いられる状況となっています。このため、20歳未満を対象に、全国で初めて、再接種のための費用の全額を助成することといたしました。感染症のリスクから子供たちを守り、がん治療を終えた後、新しい気持ちで前に進んでいけるよう支えてまいります。
 こうした様々な取組により、医療保険や介護保険といった制度の狭間で公的支援が届いていない方々にも、きめ細やかな支援ができることになります。今後とも、県議会や、「さが現場の声と想いをつなぐ懇談会」をはじめとする県民の皆様の声をお聴きしながら、人の痛みに敏感な県政を推進することとし、できることから一つ一つ取り組んでまいります。
 次に、「子育てし大県を推進する」予算について申し上げます。
 佐賀県で子育てがしたいと思われるような県づくりを推進する「子育てし大県”さが”プロジェクト」の新たな取組として、双子や三つ子といった多胎家庭を妊娠期からサポートしていくことといたしました。多胎妊娠の場合の育児は、授乳や入浴などが同時かつ多発になることで、親の睡眠不足、外出や家事の困難さによる負担感、孤立感が大きいという特別な事情を抱えています。このため、多胎育児を経験した方との交流や育児相談につなげる取組と併せて、家事の援助や外出を支援するヘルパーを派遣することといたしました。こうしたきめ細やかな支援に県全域で取り組むことで、多胎家庭を支える佐賀らしいモデルづくりを進め、少しでも安心して出産・育児ができる環境を整えてまいります。
 教育への支援としては、公立高校に比べて授業料などの負担が大きい私立高校において、4月から、一定の所得の家庭を対象に就学支援金が引き上げられ、授業料の実質的な無償化が実現します。あわせて、本県が独自に行っている私立高校への入学補助金の対象を拡充することとし、中学生の進路選択の幅を広げてまいります。また、大学や専門学校などの高等教育機関の無償化も始まりますが、高校と専門学校への支援制度の狭間にあった高校の専攻科について、本県が国へ提案していたことが実現し、看護人材を養成している県内の看護専攻科が新たに支援の対象となりました。子育て家庭の教育費の負担軽減を図ることで、将来を担う若者の学びを支えてまいります。
 次に、「さがの未来につなげる」予算について申し上げます。
 歩くライフスタイルへの転換に向けた取組については、歩く習慣づくりに役立てていただこうと開発したウォーキングアプリ「SAGATOCO」の活用を呼びかけています。配信開始から約3か月で3万人を超える方に登録いただいており、日常生活の中で歩くことを意識し、楽しむきっかけにしていただいているものと考えています。また、昨年の豪雨災害で被災した商店街などを舞台に、まち歩きを楽しみながら商店を巡るイベントを開催いたします。まちを歩くことで、商店や地域の魅力に触れてもらい、その後の来訪のきっかけとすることで、災害からの復興、地域の賑わいづくりを後押ししてまいります。さらに、サイクルツーリズムの推進や路線バスの利用を促す取組などを通じて、環境に優しいまちになり、人が歩くことで賑わいが生まれ、何より自分自身が健康になっていく、こうした多様な効果が期待できるライフスタイルを広げてまいります。
 次に、「山を大切にする」取組について申し上げます。
 山の環境は、そこで暮らす人と人のつながりの中で守られています。そうした山ならではの暮らしや魅力を紹介するウェブサイト「佐賀のお山の100のしごと」を昨年11月に開設いたしました。こうした情報発信と併せて、山に住み続けてきた方や移住してきた方、関心がある方など、多様な方々が集まって山のことを語り、考える山の会議を開催いたします。山を大切にする人々をつなぎ、山を舞台に生まれる自発の地域づくりの動きを支援してまいります。
 山での営みを支える取組としては、中山間地域において、担い手の減少や耕作放棄地の増加などの課題に対応するため、農作業を受託する広域営農組織の設立・運営を支援することといたしました。また、棚田地域において、地域の魅力を引き出し、新たな動きを生み出す取組の中心となるコーディネーターを配置することとし、地域の資源を活かした稼ぐ工夫などを通じて、住民による自立した活動として定着していくよう支援してまいります。こうした取組によって中山間地域での住民のチャレンジを支え、農村を守る動きを広げてまいります。
 また、人工林の割合が全国一の佐賀県においては、戦後に造林されたスギやヒノキの多くが伐採に適した時期を迎えており、森林資源を保全・活用する上では、伐採と植林を計画的に実施する必要があります。このため、県産木材の利用拡大に力を入れており、これまで実施してきた民間住宅や自治公民館の木造化を支援するための補助の対象に、新たに住宅のリフォームや木塀の設置を追加することといたしました。地球環境の変化や多発する豪雨災害を受け、平野部の暮らしを支え、海への恩恵をもたらす源流である山を大事にしなければという強い想いで「森川海人っプロジェクト」に取り組んでおり、森林の伐採と植林、さらには山の保全につながる県産木材の利用を通じて、林業の活性化を図り、豊かな自然を未来につなげてまいります。
 次に、佐賀牛の生産拡大に向けては、肥育素牛の県内自給率を高め「佐賀生まれ、佐賀育ちの佐賀牛」を増やしていきたいと考えています。このため、主要産地である唐津地域において、担い手の研修機能を備えた肥育素牛の生産拠点となる牛の産婦人科「ブリーディングステーション」を整備することといたしました。母牛の種付けから分娩までの繁殖を農家に代わって実施する施設としては国内最大規模のもので、繁殖農家の負担軽減と肥育素牛の生産拡大を支援し、日本一の生産拠点を実現してまいります。
 次に、企業の成長を支えるIT人材を育成・確保する取組について申し上げます。AIやIoTなど先進技術によって仕事や働き方が目まぐるしく変化する中、ITの知識やスキルを持った人材の育成・確保が課題となっています。そこで、不足するプログラミング人材を育成するための講座を開催するとともに、IT産業へのエンジニアなどの人材供給を想定した人材育成と就職に向けたマッチングにより、企業の人材確保や新たなビジネス創出につなげてまいります。また、ものづくり産業を対象に、生産性向上に取り組む企業へのAI・IoT技術の導入と社内人材の育成を支援することなどにより、県内企業の生産性向上を支援してまいります。
 地域経済の担い手である高校生の県内就職を促進する取組については、県内就職率を60%以上に引き上げることを目標に高校生を支援する「プロジェクト60」に取り組んでいます。工業高校などに配置した県内就職支援員による企業情報の提供や就職相談への対応、企業説明会の開催などを進めてきた結果、昨年12月末時点において、県内就職を希望する高校生の割合は前年を3ポイント上回る61.1%となっており、県内就職率の増加が期待できる状況となっています。引き続き、支援員による高校生のサポートに力を入れるとともに、反響が大きかった保護者向けの合同企業説明会の会場を増やすなど取組を充実させてまいります。また、県内企業からの新たな求人獲得が課題となっている私立高校において、資格取得や技術習得に必要な設備の整備及び外部人材の活用などの教育環境の充実を支援することで、県内企業からの求人の増加や早期の内定につなげ、高校生が佐賀で夢をかなえ、地域経済の担い手として活躍していけるよう後押ししてまいります。
 また、県外にいる方のUターン就職と県内企業の人材確保を支援する取組として、全国初となるWEB上での合同企業セミナーを今月15日に開催いたしました。当日は、県内での就職を考えている延べ約2,000名が参加し、30の事業所とWEB上で質問などのやり取りを行い、働く場として県内企業のことを知る機会となりました。
 次に、佐賀県の医療を担う医師の確保については、佐賀大学医学部において、本県の医療を担っていくことが期待される医師が育っているものの、卒業後はその多くが県外に流出している現状があります。また、県内では、産科、外科の診療科の医師が特に不足しているほか、この4年間に34歳以下の医師数が50人減少するなど、医師確保は重要な課題だと考えています。このため、不足する診療科の医師を確保するために佐賀大学や長崎大学の医学部の学生を対象に行っている修学資金貸与制度の対象診療科を拡大することといたしました。さらに、佐賀大学医学部において、県内の地域医療を考える教育を卒業の前後で一貫して行っていただくことで、佐賀で必要とされる医療に貢献し、活躍したいという志を持った医師を育て、医師の県内定着を促すこととしています。加えて、医療機関のトップによるシンポジウムや女性医師による懇談会などを通じて、男女を問わず働きやすく、やりがいを感じる医療現場づくりを促すとともに、女性医師の割合が全国より高い本県において、出産などで現場を離れた女性医師の復帰を支えてまいります。私自身も、離島医療を支えている自治医科大学卒業の医師や、佐賀大学医学部の学生などとお会いし、佐賀の医療を支えていただきたいという想いを直接伝えてまいります。こうした取組を通じて、大学や医療関係者、市町と連携し、オール佐賀で、医師の「学ぶ・働く・暮らす」をサポートしてまいります。
 次に、地域資源を活かす取組について申し上げます。
 九州新幹線西九州ルートの開業後、特急本数が大幅に減ることになる長崎本線沿線地域においては、鹿島の酒蔵や太良の海中鳥居が、地域の魅力と創意工夫によって人を呼び込むことにつなげているように、住民が主体となる地域づくりをいかにして生み出していくのかが重要だと考えています。沿線における体験型の旅行商品開発の支援や、肥前浜駅での利き酒体験スペースの設置などを通じて、鉄道や駅を利用した沿線における自発の地域づくりをしっかりと支援してまいります。
 次に、名護屋城の魅力を伝え、交流を生み出す取組として、城跡と陣屋跡の価値を再発見するプロジェクトをスタートいたします。名護屋城は、築城当時、大阪城に次ぐ規模を誇り、全国から集まった150もの武将の陣屋跡が残されています。徳川家康、伊達政宗、真田昌幸などの陣屋跡を巡る取組や、当時の暮らしをしのぶ茶の湯、能、鷹匠の実演などの地域が主体となって取り組む文化体験との連携など、名護屋城ならではの歴史の魅力を活かして、歴史ファンのみならず多くの人を呼び込む文化ツーリズムのきっかけを創り出してまいります。
 佐賀を支える社会資本の整備については、災害発生時の避難や救急搬送など「命をつなぐ道」として幹線道路ネットワークの重要性が増しており、主要都市を結び、広域的な高速道路網を構成する有明海沿岸道路、佐賀唐津道路、西九州自動車道及び国道498号の整備を、引き続き推進してまいります。このうち、有明海沿岸道路については、令和4年度に大野島インターと(仮称)諸富インター間が開通する見込みであり、芦刈南インターと福富インター間の工事も着実に進んでいます。この有明海沿岸道路と佐賀唐津道路が接続するエリア「Tゾーン」の整備は、九州佐賀国際空港や佐賀県医療センター好生館などとの広域的なアクセスを向上させるものであり、県民の暮らしと地域の飛躍を支える基盤として重点的に取り組んでまいります。
 また、九州佐賀国際空港においては、中国・武漢を中心とした新型コロナウイルス感染症の影響で、西安便の運休や上海便の減便が続いていますが、日韓関係の影響で昨年8月から運休していたソウル便については4月からの運航再開に向け調整されています。このように、空港の利用者数は国際情勢に影響される面はあるものの、九州におけるゲートウェイ空港として九州佐賀国際空港の優位性は変わらないと考えており、更に多くの利用者及び路線・便数の受入れが可能となるようターミナルビルや駐車場の拡張を着実に進め、空港の機能強化を図ってまいります。
 港湾の整備については、コンテナ貨物取扱量が増加している伊万里港において、コンテナの積み下ろしに使うクレーンの更新のタイミングを捉えて、ガントリークレーンを1基増設し2基体制へと増強することといたしました。コンテナの荷揚げ時間の短縮やクレーンが故障したときのバックアップ体制の確保など、コンテナターミナルの機能強化を図ってまいります。また、呼子港において、離島航路利用者の安全性や利便性の向上のために既存の4つの航路の定期船発着所を集約することとし、浮桟橋や防風フェンスを整備することといたしました。あわせて、港の利用者や地域住民の憩いの場、交流を創出する空間として海辺の芝生広場を整備するなど、港を活かした地域づくりを進めてまいります。
 次に、令和元年度補正予算案の概要について申し上げます。
 補正予算の編成に当たりましては、11月補正後の情勢の推移に対応することといたしており、今回提案いたしました令和元年度2月補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ

一般会計 減額約12億6,600万円
特別会計 減額約50億3,200万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約4,744億2,100万円
特別会計  約1,988億4,400万円

となっています。
 次に、予算外議案といたしましては、条例議案として29件、条例外議案として17件となっています。
 このうち、乙第15号議案「佐賀県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例(案)」につきましては、残土処分場から周辺の道路や河川に土砂が大量に流出する事案が発生したことなどから、土砂災害や土壌汚染を防止し、県民の生活の安全を確保するため、3,000㎡以上の埋立てや盛土などを許可制とし、罰則規定を設けるものです。
 その他の議案につきましては、それぞれ提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
 最後になりますが、昨年12月に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の山川理事長をお招きした宇宙シンポジウムを県立宇宙科学館で開催しました。人類が初めて月に着陸して昨年で50年が経ち、時代が大きく変化する中、JAXAは、人工衛星の観測、通信、測位などの技術で、災害対応や農業分野での利用など、未来に向かって地球のためにできることへの挑戦を続けています。
 150年前の幕末維新期の激動の中で、佐賀の先人たちは、世界に目を向け、国の将来を想い、最先端の技術や知識を取り入れて蒸気船の建造や鉄道の敷設などに取り組み、近代日本の礎を築いてきました。
 そして今、時代は大きな変動の中にあります。平成の始まりからの30年ほどを振り返ってみても、当時は想像もしなかったようなことが今では当たり前になっています。例えば、携帯電話が誕生し、当初は専ら通話やメールで使われていたものが、インターネットの普及とともに情報端末へと進歩し、カメラや動画、音楽を楽しみ、キャッシュレス決済を行うツールへと進化しています。さらに、この先の未来に向かって、自動運転の車や自動収穫ロボット、遠隔操作できる建設重機、無人店舗など、更なる時代の変化の芽は様々な分野で生まれており、近い将来、私たちが想像していないような社会が到来するものと考えています。AI、IoTの進化やグローバル化の進展などにより、世界というものが小さくなり、国境や県境の意識も変わっていく中で、未来に向かってどんな種を蒔き、布石を打っていくのかが問われる時代を迎えています。私は、県民の皆様と共に、広い視野で未来を想い描き、伝統や文化に根差した佐賀の価値を大切にしながら、最先端の技術や新しい発想と、暮らしの中の課題やニーズとを掛け合わせ、未来を創るためのチャレンジを続け、人が基軸で、一人一人が躍動する佐賀県の未来を切り拓いてまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。





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