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令和元年 11月28日令和元年11月定例県議会 知事提案事項説明要旨

最終更新日:

 令和元年11月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
 今年は、佐賀県の礎である農業にとっても辛抱の年となりました。県産米は、台風17号による塩害やトビイロウンカによる害虫被害などにより作況指数63と記録的な不作となっています。本県を代表する「さがびより」も、例年は、透明感のある粒ぞろいの1等米がほとんどを占めるところ、今年は2等米、3等米が大幅に増加しています。これまで「さがびより」の透明なパッケージには、1等米だけを入れて販売するという厳格な基準でブランドを築き上げてまいりました。今年のような苦しい状況にあっても、将来にわたって「さがびより」ブランド、ひいては、佐賀というブランドを守るという強い気持ちで、その基準をしっかり維持することとし、急きょ、2等米、3等米用のパッケージを作成しています。佐賀米は2等米、3等米であっても味に遜色がないことから、「佐賀米を食べて応援しよう」と県民に呼びかけており、佐賀の実りを支えている農家の皆様を応援していただきたいと考えております。
 本県で8月に発生した「令和元年佐賀豪雨災害」の復旧・復興に向けた取組については、9月11日に、それまでの「災害対策本部」を「復旧・復興推進本部」に切り替え、被災者支援や農業、商工業支援など、重点的に取り組むべき分野毎に部局長を責任者とするチームを編成し、被災された方々のニーズに寄り添った支援に全庁を挙げて取り組んでいます。
 復旧・復興を進める上で、私や県議会の皆様から国へ直接要望していた激甚災害への指定は、農地等の復旧については、支援対象となる地域を限定しない激甚災害に指定され、県内全ての市町が支援の対象となりました。また、支援対象となる地域を限定する局地激甚災害として、公共土木施設の復旧については、多久市、大町町が、中小企業の支援については、武雄市、大町町が指定されました。指定により国庫補助がかさ上げされるなど自治体の財政負担が軽減されるため、復旧・復興の後押しになると考えています。
 自宅が被災した方への支援としては、寝具などの生活必需品の供与、保健師の巡回訪問などによる健康管理や心のケア、県職員の派遣による避難所運営や罹災証明発行などの支援に取り組んでまいりました。住まいの確保に向けては、公営住宅の空き部屋の活用や、民間の賃貸住宅を県が借り上げて無償で入居できるようにする「みなし仮設住宅」の提供、自宅の応急修理を行う際の支援を進めています。そうした中、10月20日には、大町町の避難所に避難していた方が退所され、県内全ての避難所からの退所が完了しました。災害廃棄物については、県内や福岡県、長崎県の自治体の協力を得て広域的な処理が進んでいます。被害を受けた特別養護老人ホームや、こども園などの社会福祉施設については、浸水した床の張替えなど被災箇所の修復にかかる経費を補助してまいります。また、「ふるさと納税」の寄附金等を活用し、県内外のCSOで構成する「佐賀災害支援プラットフォーム」の活動を支えるとともに、被害を受けた地域の自治公民館の修理や地域コミュニティの再生など、被災地が元気を取り戻す動きを支援してまいります。
 農地や林地等の復旧に向けては、国の補助による災害復旧事業の着手に向けた手続きを進めています。大町町の油が流出した地区では、全ての水田で油の濃度について土壌調査を実施し、ほとんどの水田で営農に支障のないことが確認できました。水稲の生育に影響する可能性のある数値が確認された4つの地点については、今後、土の入れ替えなど必要な対策を講じてまいります。また、台風被害なども重なり米や大豆の収量が大幅に減少していることを受け、農家が利用する共同乾燥施設の固定経費や、浸水などの被害を受けた農業用施設・機械の修繕や再取得、さらには、被災した農地での栽培の再開に必要な生産資材の購入にかかる経費を補助することで、被災した農家が前を向いて営農を継続できるよう支援してまいります。なお、今回、東日本を中心にした台風19号による被害については、特定非常災害に指定されたことなどを踏まえ、農業用機械などの復旧に係る国の補助率が引き上げられました。このことについて、本来、災害支援は、災害の規模ではなく、被災者一人一人に目を向けるべきだという問題提起を行いました。佐賀県は、これからも、被災者の想いに寄り添って復旧・復興に取り組んでまいります。
 中小企業者や小規模企業者に対しては、事業活動の再開に必要な設備の更新にかかる経費を補助する「小規模事業者再建対策事業」の受付を10月11日から開始し、また、事業者の今後の資金需要の増加に対応するため、9月に創設した「豪雨災害復旧資金」を増額するなど、被災の実態に沿った支援を続けてまいります。災害に伴う宿泊のキャンセルが相次ぐなどした県内観光の風評被害対策としては、観光需要の早期回復を目的に9月に実施した宿泊施設の料金が割引になる「元気さが!宿泊キャンペーン」を、今月から更に規模を拡大して展開しています。また、福岡に拠点を置く12の新聞社が共同で「佐賀応援キャンペーン」を展開いただいており、私も昨日、博多駅で元気な佐賀をPRしてまいりました。
 公共土木施設などの被災箇所については、土砂崩れにより全面通行止めとなっている県道杉山小城線などの復旧を目指すとともに、山腹崩壊が発生した佐賀市金立町などにおいて砂防ダムなどの整備に取り組むこととしています。一日も早く地元の皆様の不安を取り除いていけるよう、早期の事業着手を図り、被災箇所の復旧と被害の拡大防止に力を入れてまいります。
 今議会においては、こうした「令和元年佐賀豪雨災害」への対応に加え、7月の台風5号、9月の台風17号による被害に対応するための必要な予算を提案しています。復旧・復興を成し遂げる上で私が大切だと思っていること、すなわち、「ひとりひとり」、「血を通わせる」、「最後の一人まで」、こうした方針について復旧・復興推進本部の場で指示してまいりました。佐賀県らしく、現場の想いをしっかりと受け止め、被災した方々が希望を持って前を向いて歩みを進めていけるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、今後の災害への備えについて申し上げます。
 今回の豪雨災害では、県民の命を守るための初動対応において、被害のいち早い全容把握に消防防災ヘリコプターの有用性を再確認することができました。本県では、九州佐賀国際空港を拠点に、防災ヘリの令和3年3月の運航開始を目指しており、今議会には格納庫などの拠点施設の工事請負契約に係る議案を提案しています。さらに、来年度には、県内の各消防本部から隊員の派遣を受けて防災航空隊を編成するなど、運航開始に向けた体制整備を進めてまいります。
 災害を防ぐ対策としては、今回の豪雨災害を検証し、低平地が広がる本県の地域特性を踏まえた治水対策に重点的に取り組むこととしています。特に被害が大きかった六角川や牛津川では、調整池や遊水地、河川を掘削する河川改修などのハード整備と、農業用ため池の調整池としての活用、河川の水位情報など避難の判断に必要なきめ細やかな情報提供などのソフト対策を組み合わせた「六角川水系緊急治水対策プロジェクト」について、12月中の最終取りまとめに向け、国や市町と共に検討を進めています。このうち遊水地などの大規模ハード事業については、国に対し早期の着手と、「激甚災害特別緊急事業」の採択による予算の重点化を働き掛けています。プロジェクトに位置付けた取組を中心に、国や流域の市町と連携し、総合的な治水対策を着実に進めてまいります。
 次に、茨城県で開催された国民体育大会・全国障害者スポーツ大会について申し上げます。まず、全障スポが台風19号の影響で中止になったことは、大会での活躍を目指して努力を重ねてきた選手の方々にとって、とても残念なことでした。
 国体では、佐賀県勢として、レスリング少年男子で荒木瑞生選手、尾西大河選手が、ライフル射撃成年男子で髙田裕介選手が、スポーツクライミング成年男子で樋口純裕選手・靍本直生選手のペアが優勝を果たしました。さらに、バスケットボール少年女子は、佐賀国体以来となる5位に入賞し、ボウリング少年女子の笠原裕奈選手・中島望結選手のペアは4位と初の入賞を成し遂げるなど、本県が強みとするラグビー、バレーボールなどに加えて新たな競技での活躍が光る大会となりました。佐賀県では、佐賀ゆかりのトップアスリートの育成と、それを通じたスポーツ文化の裾野の拡大を目指すSAGAスポーツピラミッド構想に取り組んでいます。このSSP構想では、国内の一流指導者と県内の指導者が連携して選手を育成する取組を進めており、今国体では、佐賀工業高校ラグビー部が準優勝し、佐賀女子高校新体操部が6位となり、鳥栖工業高校レスリング部は、優勝2人、準優勝2人、3位1人を輩出するなど成果が表れています。また、アスリートの県内就職を支援する取組で今年4月に鳥栖市の今村病院に就職したライフル射撃の井浦一希選手が4位入賞を果たすなど、選手・指導者の志とSSP構想の取組が相まって、いい流れが生まれています。このSSP構想を更に推進するため、今月22日には、経済界、医療界、自治体など多くの方々が参画する「SSP構想推進協議会」を設立いたしました。また、40を超える企業からSSP基金への寄附やアスリート雇用などに協力をいただけることとなりました。今後も、この協議会を中心に、SSP構想への理解を広げ、スポーツを支える基盤を強化するとともに、スポーツと他産業の融合など新たな取組を進め、佐賀から新しいスポーツシーンを切り拓いてまいります。
 続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
 まず、佐賀空港の自衛隊使用要請については、8月に、事業主体である防衛省から有明海漁協の15支所の運営委員長などで構成する検討委員会に対して、計画の概要や環境保全対策などについて説明が行われました。その後、防衛省からの要請を受ける形で、支所ごとの説明会が順次開催されており、これまで15支所のうち12支所の運営委員の皆様などに対し、防衛省から直接説明が行われています。一昨日には、私が有明海漁協に赴き、德永組合長と話をさせていただきました。私から、「今回の防衛省からの要請は、国防に関するものであり、要請を受け入れていただきたい」と改めて申し入れを行いました。その上で、残る3つの支所についても防衛省による説明会が開催されるよう環境を整えていただきたいということなどについて要請しました。組合長からは、説明会では、防衛省は国防上の必要性を正面からしっかり説明するべきであると考えていること、また、残りの支所への説明については、支所の意向次第ではあるが、タイミングを見てということになるのではないかといった話がありました。今後とも、事業主体である防衛省による説明会が全ての支所で開催され、漁協内での議論が進むよう引き続き調整してまいります。
 次に、九州新幹線西九州ルートについては、赤羽国土交通大臣が9月の就任会見において「面会し話を聞きたい」と発言されたことを受け、10月28日に大臣と意見交換を行いました。私からは、これまでの経緯や佐賀県の想いと共に、新鳥栖-武雄温泉間について「フル規格が前提の議論には応じられない」という考えを伝え、大臣とは、今後も率直に話をしていくことになりました。新鳥栖-武雄温泉間のあり方に関する本県の考えは、これまでと変わりません。そもそも西九州ルートは、新鳥栖-武雄温泉間は在来線を利用することを大前提として整備が進められてきたもので、当時、佐賀県は、鹿島市や太良町などの長崎本線沿線地域の皆様の辛い想いの上に、ギリギリの判断で長崎本線肥前山口-諫早間の上下分離に合意し、多額の費用負担を伴う武雄温泉-長崎間の新線整備に同意したものです。将来の新鳥栖-武雄温泉間のあり方について、様々な可能性を議論することは閉ざしてはおりません。佐賀県は、これまで、スーパー特急、フリーゲージトレイン、リレー方式には合意しており、この3つの方式については異論ありませんが、これまでの合意にないフル規格やミニ新幹線については、佐賀県の将来に極めて大きな影響が生じるものであるため、5つの方式を対象とした協議であれば、ゼロベースからしっかり時間をかけて議論すべきだと考えています。
 また、令和4年度の西九州ルートの開業に伴い上下分離されることになる長崎本線肥前山口-諫早間については、佐賀県、長崎県、JR九州の三者で準備を進める中で、上下分離後の肥前山口-諫早間の維持管理費が当時の見込額を大きく上回る見通しとなりました。維持管理費の負担割合については、平成20年4月に長崎県との間で、佐賀県と長崎県が1対2の割合で負担することを確認しています。この負担割合については、平成20年7月の長崎県議会で、当時の長崎県の金子知事が、「西九州ルートの実現は、佐賀県の理解と協力が不可欠であり、佐賀県は2つの新幹線を抱えるという特殊事情を有していることから、本県の誠意として、いわゆる『応分の負担』を行う用意があることを県議会等でたびたび表明してまいりました。」と述べられています。最終的に佐賀県1に対し長崎県2と確認したことについては、「これは並行在来線の費用負担が新幹線整備に伴うものであり、これと一体的に取り扱うことが適当との考え方から、新線の区間延長比が概ね1対2であること。また、並行在来線の利用機会という点から、沿線人口比も概ね1対2であることに基づくものであります。」とその根拠を答弁されています。今回、この増加分の費用負担を巡り、長崎県がこれまでの合意と異なる主張をされていますが、佐賀県は、これまで合意したことは守るという姿勢で真摯に取り組んでおり、長崎県に対しても、これまでの合意を踏まえ誠意をもって対応していただくことを求めてまいります。
 次に、有明海の再生について申し上げます。
 諫早湾干拓関連訴訟については、開門を命じた確定判決を無効化した福岡高裁判決を、最高裁が9月に破棄し差し戻したことから、福岡高裁において来年2月に審理が行われることとされています。一方で、最高裁は6月に2件の開門しない決定をし、国も開門しない方針を示していることから、開門調査の実現は極めて厳しい状況が続いています。引き続き、福岡高裁がどのような判断をするのか注視してまいります。10月2日には江藤農林水産大臣が本県を訪問され、県有明水産振興センターにおいてアゲマキやウミタケなどの二枚貝の再生に向けた取組状況を視察されました。その後の意見交換では、漁業者の「以前の宝の海にしてほしい」という切実な声を直接聞いていただきました。私からは、有明海の再生のためには開門調査を含む環境変化の原因究明が必要という想いは変わらないことを伝えるとともに、裁判の帰趨に関わらず、有明海漁協が要望されている「有明海再生事業の継続」、「こまめな排水の実施」、「排水ポンプの増設」について、国の積極的な対応を要請しました。大臣からは、「裁判と有明海再生のための予算はリンクするものではない」、「有明海の再生はしっかりやる」という旨の発言があり、宝の海の再生を願う現場の想いを受け止めていただいたものと考えています。
 有明海の水産資源については、10月に実施したタイラギの生息状況調査でも成貝がほとんど確認できないなど厳しい状況が続いています。タイラギの復活に向けては、昨年度から着手している種苗生産技術の開発を進め、海底への移植につなげていけるようチャレンジを続けてまいります。平成29年度から3年連続で試験出荷に結びついたウミタケについては、人工稚貝の放流を昨年に続き10月に実施いたしました。放流した18万6千個の稚貝が成長し、さらなる資源の増大につながるよう取り組んでまいります。
 宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題であり、今後も訴訟の状況や国の動向を注視し、関係者と意見交換をしながら全力で取り組んでまいります。
 次に、原子力発電について申し上げます。
 玄海原子力発電所では、九州電力が今年1月に原子力規制委員会に申請していた3号機の使用済燃料貯蔵プールの保管容量を増やす「リラッキング」が、今月20日に許可されました。県に対しては、安全協定に基づく事前了解願いが提出されており、今後、規制委員会の審査結果などをしっかりと確認し、県としての判断を行ってまいります。また、九州電力は、重大事故などが発生した場合の指揮所となる「緊急時対策棟」の完成時期を、今年12月から令和5年9月に延期する届けを規制委員会に提出しました。この施設は、既に設置されている新規制基準に適合した「代替緊急時対策所」の機能を拡充させるものであり、九州電力に対し着実な整備を求めてまいります。玄海原子力発電所とは、廃止措置が決定している1号機、2号機を含め、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。九州電力の安全に対する取組を注視していくとともに、今後とも、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
 再生可能エネルギーを中心とした社会の実現に向けては、10月8日に、佐賀大学との間で「再生可能エネルギー等先進県の実現に向けた連携協定」を締結するとともに、産学官連携による技術開発や市場開拓などを推進する「再生可能エネルギー等イノベーション共創プラットフォーム」、CIREn(セイレン)を設立いたしました。幕末・維新期に我が国の科学技術を牽引した「精煉方」を現代に再興するとの想いを込めたこの組織を中心に試行錯誤を重ね、研究開発や市場開拓を積極的に推進してまいります。
 次に、国際経済連携協定について申し上げます。
 日米貿易協定については、10月7日に日米両政府による署名がなされ、現在、国会において承認に向けた手続が進められています。その主な内容は、輸入については、農産品の関税がTPPの水準を超えない範囲で引き下げられることとなり、輸出については、自動車の関税撤廃について継続協議とされています。今月14日には「第12回佐賀県国際経済連携協定等対策本部会議」を開催し、今回の協定内容や、T P P、日EU・EPAの協定発効後の牛肉、豚肉の輸入状況などについて関係部局間で情報共有を図ったところであり、引き続き、現場の実態把握に努め、農林水産業をはじめとした本県の産業が持続的に発展していけるようしっかりと取り組んでまいります。
 次に、平成30年2月に陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプターが神埼市の住宅に墜落した事故については、9月27日に山本防衛副大臣から事故原因及び再発防止策について説明を受けました。事故につながったメイン・ローター・ヘッドを構成するボルトの破断原因については、保管中に腐食防止剤が劣化し異常作動を起こしたことに絞り込み、さらに、ヘリ搭載前に何らかの理由でボルトに亀裂が発生した可能性も排除せず対策を講ずることとされました。この双方に有効な再発防止策として、ヘリ搭載前に超音波による検査を行うことや金属製コンテナで保管することなど、点検や保管の方法を見直すことが示されました。こうした防衛省の説明に不合理な点はないと考えています。私からは、改めて、事故により地域住民が受けた衝撃にしっかりと思いをはせ、再発防止を徹底するよう要請しました。飛行の再開については、県外の駐屯地での点検整備や訓練を重ねた上で、改めて説明があると聞いています。同じような事故が二度と起こることのないよう防衛省の安全対策を注視してまいります。
 続きまして、最近の県政の主な動きについて御説明申し上げます。
 九州佐賀国際空港については、「上海便」に次ぐ第二の中国路線として10月28日から春秋航空による「西安便」が、九州で唯一の定期直行便として就航しています。西安は、人口約1,000万人と中国西北地方最大の都市で、かつて隋、唐の時代の都・長安が置かれた歴史があり、「秦の始皇帝陵」や「兵馬俑」といった世界遺産があるなど、歴史・文化と都会的な魅力が融合した国際的な観光都市です。およそ二千年前、秦の始皇帝とほぼ同じ時代に倭国の中心的な集落として栄えた吉野ヶ里遺跡のある佐賀県が西安と結ばれたことは、時代を超えたつながりを感じます。中国内陸部とは初めてとなる直行便であり、需要には未知数な部分もありますが、誘客先の多角化を図るマルチインバウンド対策の一つと位置付けています。佐賀をはじめとする九州と西安の双方の魅力発信に努め、新たな旅行先として多くの方に選ばれるよう春秋グループと連携し、今回のチャレンジを成功させたいと考えています。
 次に、維新博メモリアル展示について申し上げます。
 多くの方に御来場いただいた維新博の感動を再び体感し、来場できなかった方にも是非見ていただいて素晴らしい先人たちを大切に語り継いでいってほしいとの想いを込めた「維新博メモリアル展示」を、10月19日から県立博物館、佐賀城本丸歴史館、旧古賀銀行で公開しています。佐賀への誇りや志という維新博で生み出した未来を創るエネルギーを、この場所から広げてまいります。
 次に、歩くライフスタイルへの転換に向けた取組については、「歩こう。佐賀県。」をスローガンに、自家用車に頼りすぎているライフスタイルを、自転車やバス、電車などを利用し、歩くことへ転換していくことを呼びかけています。ウォーキングアプリ「SAGATOCO」を活用し、一日の歩く目標やランキング、健診やイベント参加によるポイント取得を楽しむことなどを通じて、歩く習慣づくりに役立てていただきたいと考えています。また、10月7日には「さが健康維新県民会議2019」を開催し、県内の企業・団体などが参加して生活習慣病の予防と健康づくりに向けた県民運動をスタートいたしました。歩くことで自らが健康になることに加えて、多くの人が行き交うことで交流が盛んで賑わいのある地域づくりにつなげてまいります。
 次に、がん対策の推進について申し上げます。
 本県は、肝がんの死亡率が19年連続全国ワーストワンという厳しい状況が続いていましたが、市町、医師会などと連携し、佐賀大学医学部に設置した肝疾患センターを拠点に肝炎ウイルス検査の受診や治療、治療後の定期的な検査を促す取組を進め、平成30年の速報値でワーストワンから脱却することができました。しかしながら、依然として死亡率は全国ワーストレベルにあることから、引き続き、肝炎ウイルス検査の受診を促すとともに、精密検査や治療が必要な方と医療機関との橋渡しに努めてまいります。また、子宮がんなど女性特有のがんの死亡率も全国より高い状況にあるため、子宮頸がんの原因となるウイルスの診断薬などの売上で世界ナンバーワンのロシュグループの日本法人と「女性をがんから守る連携協定」を締結いたしました。がんに関する知見が豊富な企業と連携することで、子宮頸がんに関する正しい知識を普及させ、検診の受診を促してまいります。今後も、がんで亡くなる方を一人でも減らしていけるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、佐賀で働く若者を増やす取組について申し上げます。
 佐賀県には、優れた技術や素晴らしい魅力を有する企業が数多くある一方で、若者が就職を機に県外に流出してしまっているという課題があります。そうした中、佐賀大学など県内の大学が中心となって「さがを創る大交流会」を開催しました。145の企業、団体などがPRブースを出展し、参加した1,000名を超える学生に向け県内企業の魅力を紹介する場となりました。また、佐賀と東京での暮らしを、それぞれの視点で紹介する「さがライフデザインノート」を作成しました。大学で開催するセミナーなどで活用することで、「何となくの都会へのあこがれ」で就職先を判断するのではなく、結婚、子育てなどのライフステージをイメージし、自分らしい人生を実現する場所として佐賀を考えてほしいと思っています。さらに、県外に進学、就職した本県出身者に対して、結婚や子供の成長に応じた人生の転機に、佐賀へ戻ることを後押しする交流会「Re:サガワーク」を福岡と東京で開催しました。県内企業と参加者との対話を通じて、佐賀で働くことを具体的にイメージしていただく時間となりました。県内企業のことを知り、佐賀で暮らすことの良さを考えていただくこうした取組を通じて、佐賀で働きたいという方々を支援してまいります。
 次に、地域資源を活かしたビジネスを創出する取組について申し上げます。
 県では、今年度から、食材と器と料理人が織りなす「SAGAマリアージュ」を掲げ、イノベーションを起こして新たな価値を創造する取組を進めています。その象徴的なものとして来年3月24日に武雄市で開催する「アジアベストレストラン50」に先立ち、3月14日と15日の両日、唐津市で、料理と文化の融合をテーマに「SAGAガストロノミー会議」を開催することといたしました。料理人をはじめ、食に関わる様々な分野のプロフェッショナルが本県の生産者や職人などと交流を深めることにより、食に関する新たな創造を生み出すとともに、回遊型の飲食イベントを開催するなど、地元飲食店や街の活性化にもつなげてまいります。食に関する2つの国際的な祭典を続けて開催することで、佐賀県が誇る食材と器が世界に評価され、料理人によって新たな価値が生まれることが期待されます。取組を通じて、本県の地域資源を生かしたビジネスの創出につなげてまいります。
 次に、「森川海人っプロジェクト」について申し上げます。
 アマゾンの森林火災やベネチアの高潮など、開発や地球温暖化の影響が疑われる自然災害が増加し、日本でも記録的な豪雨が毎年のように発生しています。多発する豪雨災害を受け、平野部の暮らしを支え、海への恩恵をもたらす源流である山を大事にしなければという強い想いでこのプロジェクトに取り組んでいます。この想いに共感いただく企業、団体などを「チーム森川海人っ」として登録し、また、佐賀西高校に設置した県産木材を使った「さがのき塀」のように森川海の恵みから生まれた製品を「森川海人っプロダクト」として登録し発信していくことといたしました。自然環境を保全する活動への参画を促し、豊かな「森川海」の環境を「人」が未来につなげる取組の輪を広げてまいります。
 続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
 今回の補正予算案の編成に当たりましては、「令和元年佐賀豪雨災害」及び9月補正後の情勢の推移に対応するため、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。この結果、補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ、

一般会計  約74億9,600万円
特別会計  約34億5,600万円

となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、

一般会計  約4,756億8,700万円
特別会計  約2,038億7,600万円

となっております。
 次に、予算案の主な内容について申し上げます。
 まず、SAGAサンライズパークの整備については、中核施設となるSAGAアリーナの建物本体工事の請負契約の入札において、予定価格と入札価格に大きな開きがあり不落となりました。その主な要因は、東京オリンピック関連や民間の大型開発、大規模災害の発生に伴う復旧工事などにより鉄骨の需給バランスが崩れ、設計時から入札時までの期間において建設市況が大きく変化し、建設資材が高騰したことなどによるものと考えています。こうした状況の変化を踏まえ、設計や積算の見直しを行い、継続費の増額補正を今議会に提案しています。今回の不落によってSAGAサンライズパークの整備に遅れが出ることになりますが、透明性・公平性を確保しながらできるだけ早期に再入札を行い、適正工期を確保するなど安全を第一に工事を進め、国スポ・全障スポの本県での開催に向けてしっかりと取り組んでまいります。
 次に、CSF(豚コレラ)の侵入を防止する取組について申し上げます。
 昨年9月に岐阜県で発生したCSFは、これまでに9府県で発生が確認され約15万頭が殺処分されるなど大きな被害が発生しています。感染の原因は、野生のイノシシとの接触や、人・車両の行き来によるウイルスの持込みと考えられており、その対策として、養豚農家による農場へのイノシシ防護柵の設置に係る経費を補助することといたしました。また、県家畜保健衛生所において、疑い事例の早期診断に必要な機器を整備するなど検査体制を強化するとともに、万一の発生に備え、封じ込めに必要な防疫資材の備蓄を進めるなど、養豚農家を守るため防疫体制を強化してまいります。
 次に、建設工事早期着手対策について申し上げます。翌年度に発注予定の事業のうち、雨期前に実施する浸水対策、防災対策、安全対策などの工事を一部繰り上げて発注し、事業効果の早期発現を図る、いわゆる「ゼロ県債」について、債務負担行為約14億円を提案しています。
 次に、予算外議案といたしましては、条例議案として7件、条例外議案として16件となっています。
 このうち、乙第83号議案「佐賀県産業廃棄物税条例の一部を改正する条例(案)」につきましては、産業廃棄物の排出抑制、再生利用などの促進を図り、循環型社会の実現に寄与することを目的とする産業廃棄物税の現行課税制度を5年間延長し、令和6年度まで継続するものです。
 また、乙第86号議案「佐賀県青少年健全育成条例の一部を改正する条例(案)」につきましては、青少年のインターネットやスマートフォンの利用が進む中、青少年が、自分で撮影した裸の画像などを送付させられる「自画撮り被害」が発生していることから、青少年を被害から守るため、画像の提供を求める行為を一切禁止し、罰則規定を設けるものです。
 その他の議案につきましては、それぞれ提案理由を記載していますので説明を省略させていただきます。
 最後になりますが、日本で初めて開催されたラグビーワールドカップでは、日本チームが史上初のベスト8をつかみ取りました。様々な国をルーツに持つ選手たちが世界の強豪国に挑む姿は、一人一人の力が一つになることで生まれる力強さを教えてくれました。私が知事に就任する前、ラグビーワールドカップ組織委員会で開催に向け力を尽くした岩手県釜石市では、東日本大震災で受けた津波被害からの復興の象徴としてスタジアムが整備され、市民が一つになって受入に向けた準備を進めてきました。その姿は、復興に向かう力強い歩みを伝えていました。「志」を持って前に進むこと、そして、その力が一つになることで、地域が、そして日本が元気になることを体感することができました。
 「維新博」や「さが総文」では、多くの県民の胸に、自分自身のため、そして、これからの佐賀のために何かを成し遂げたいという想いが生まれました。最近の県民世論調査では「佐賀が好き」と答える方が着実に増加しています。佐賀県には、こうした土台の上に、様々な分野で「志」を抱いて歩む人たちがいます。

  • 天皇陛下の即位を祝う祭典に招かれた鹿島市の母ヶ浦(ほうがうら)面浮立保存会のように、地域の伝統を守り、若い世代に受け継ぐ活動を続けている人々
  • 全国高校生介護技術コンテストで初優勝した神埼清明高校のように、介護を必要とする方に寄り添い、安全で自立支援につながる介護技術を磨いている高校生
  • そして、基山で「九州を旅する方の拠点にしたい」とゲストハウスを始めたり、有田で「空き店舗のオーナーと出店希望者をつなぎたい」と街なかマルシェを開いたり、唐津の松島で「宿泊して自然を快適に楽しんでほしい」とグランピング施設を計画したりと、地域で新しい価値を生み出している若者たち

 こうした「志」を持った人々のそれぞれの歩みで、佐賀県の未来は拓かれていくのだと思います。ラグビーワールドカップを通じて多くの国民が感じた「ワンチーム」になることの素晴らしさを改めて思いながら、「佐賀が好き」という想いを県民の皆様と共有し、多様な力を一つにして「チーム佐賀」で前へと進んでいく躍動する佐賀県を創り出してまいります。今年は、佐賀県にとって、災害など厳しい状況が続いています。だからこそ、強い想いで「チーム佐賀」で前へ進んでまいります。
 以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
 よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。





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