令和7年9月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
説明に入ります前に、去る7月14日にお亡くなりになられました重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝の井上萬二先生に対しまして、謹んで哀悼の意を表します。白磁の巨匠である萬二先生は「名陶無雑」を座右の銘にし、生涯をかけて白磁の造形美を追求されました。一点の曇りも許されない白磁の世界において、「白磁はただ白だから白磁ではない、形が美しいから白磁である」との強い信念をお持ちでした。純白で透き通るような質感と柔らかで滑らかな曲線から生まれた作品は、静謐な美しさと威厳、凛とした佇まいで圧倒的な存在感を放ち、日本のみならず世界の人々を魅了しました。第13代酒井田柿右衛門、初代奥川忠右衛門のもとでの厳しい修行などを礎に、「雑念」のない理想の白磁を追い求め、常に挑戦を続け、萬二先生が体現されてきた「挑戦なくして伝統なし」の精神は、未来を担う若い世代へと受け継がれていきます。心から御冥福をお祈り申し上げます。
それでは、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
まず、吉野ヶ里歴史公園における新たな価値の創造についてです。
吉野ヶ里遺跡は世界に誇る佐賀の大切な財産です。今年度もいわゆる「謎のエリア」に隣接する区域の発掘調査など歴史的価値を高める取組を進めております。この価値の普遍化を視野に入れ、現在、令和8年春の開業に向けて、県と株式会社スノーピークが中心となり全国で初めて歴史公園内にスタイリッシュな新感覚の体験エリアの整備を進めております。佐賀の歴史・自然・食材と、スノーピークのデザインの力が融合した唯一無二の価値を体験できるキャンプフィールドや宿泊施設、飲食施設が誕生し、歴史公園全体の価値が洗練されていくものと考えます。これまでのファンはもちろん、新たな価値を目的として歴史公園を訪れる多くの方に吉野ヶ里遺跡を見て、その歴史的価値を体感していただけるようになると考えております。地元事業者と神埼市、吉野ヶ里町、県が連携し、地元食材を活用した商品の開発などにも取り組んでおります。歴史公園を拠点に新たな人の流れが生まれ、その効果が様々な形で地域全体に波及していくよう、取り組んでまいります。
次に、世界に向け本物の価値を輝かせる鹿島・太良地域のプロデュースについて申し上げます。
JR特急の大幅な減便等により、鹿島・太良地域は大きな影響を受けております。この地域は、祐徳稲荷神社、酒蔵、海中鳥居、カキ小屋など本物の地域資源の宝庫です。点在する地域資源を面的につなぎ、パッケージとして発信し、スローツーリズムを推進していくことで、鹿島・太良地域は世界の中で人気を得る地域として鮮やかに輝くものと考えます。時間をゆったりと大切に過ごすことの価値を創造していきたいと思います。今年度から県は新しい肥前鹿島駅の整備に着手しており、7月には新駅舎の運営を担う事業者と運営準備に係る基本協定を締結しました。構想のキーワードは「nоn‐statiоn」打ち出すべきは「Relаtiоn」。単に駅をつくるといった固定観念の延長線上では新しい価値は生まれないと考えます。地域の本物の価値を継承しながら、これまで培ってきた人と人のつながりをベースに、新たな人の交流が掛け合わされ、様々な視点で具現化やデザイン化を図ることにより、世界に向けて新しい価値を生み出せる地域として光っていくものと考えております。肥前鹿島駅エリアを、鉄道を利用する人はもちろん、普段は鉄道を利用しない人や地域を訪れる人たちが気軽に集える心地の良い、人と人をつなぐ空間にしていきたいと思います。地域の方々や市町、運営事業者と力を合わせて、このエリアがスローツーリズムを国内外へ提案するフロントになるよう、取り組んでまいります。
次に、最低賃金と賃金UPに対する支援について申し上げます。
8月に開催された佐賀地方最低賃金審議会において、最低賃金を現行の956円から74円引き上げ、1,030円とする答申が出されました。国が示した引上げの目安64円を10円上回る佐賀県として過去最大の引上げ幅であり、隣県福岡県との金額格差は36円から27円に縮小されますが、未だ相当の差があります。同じ福岡県隣接の山口県と福岡県の金額格差は14円です。佐賀県が豊かさへの連鎖に向かって大きく成長・発展するには人への投資が不可欠であり、金額格差の是正に向けて今後も未来を見据えた議論が尽くされていくよう働きかけてまいります。
賃金水準が物価高に追い付いていく環境の整備に当たっては中小企業の生産性向上の取組が重要です。県では、令和5年10月から「佐賀型賃金UPプロジェクト」を立ち上げ、中小企業の生産性向上を支援してまいりました。今年4月からは「NEXT賃金UPプロジェクト」として、現場の声を踏まえて支援を拡充し、賃上げを後押ししてきました。最低賃金の引上げを受けて、改めて支援に係る予算を今議会に提案しております。引き続き県内企業の生産性向上や価格転嫁を積極的に支援し、持続的な賃上げを支え、地域経済の好循環へとつなげていきたいと考えております。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、玄海原子力発電所についてです。
7月26日夜10時過ぎに九州電力から県に玄海原子力発電所敷地内でドローン3機の飛行を確認したとの報告がありました。速やかに防災監である平尾副知事が対応に当たり、九州電力に対して各治安機関と協力してこうした事案を許さない対策を講じるよう申し入れました。その後、九州電力及び原子力規制委員会はドローンと特定されたものではないとして、「ドローンと思われる3つの光を確認」との表現に訂正しました。事案発生4日後の30日に元々予定されておりました第100回佐賀県原子力環境安全連絡協議会では当初議題としてありませんでしたが、今回の事案を急遽最初に取り上げ、私から九州電力に対して申入れを行いました。申し上げた内容は、原子力発電所敷地内へのドローンのようなものの侵入は許されることではなく、上空からの侵入に対して改めて点検を行い、危機管理体制を改めて検証していただきたいこと、あらゆる可能性を排除せず、各治安機関と協力してこうした事案を許さない対策を講じていただきたいことなどです。同様の事案が発生した場合に備えて、九州電力は現時点においてできる対応として、社員及び警備員によるカメラ等の撮影を可能とする運用を開始し、今後も、投光器の配備や暗視スコープなどの拡充に取り組んでいくと聞いております。
8月に国際原子力機関IAEAの金子事務局長特別補佐官と意見交換をした際も、今回の事案を挙げながら、原子力発電は何よりも安全が最優先であることなどを申し上げました。現在も警察など治安機関において調査中ですが、今回の事案は玄海だけの問題ではなく、国内全ての原子力発電所の信頼に関わる重要なことであり、あらゆる可能性を排除せずに国全体で対応を考えていかなければならない問題だと私は認識しております。
なお、年に2回開催されるこの原子力環境安全連絡協議会には知事就任以来、一度も欠かさずに出席しており、今後も玄海原子力発電所の運転状況や安全対策などを確認してまいります。
9月3日に、九州電力から、3号機と4号機の運転開始当初から使用している変圧器について更新する計画の事前了解願いが提出されました。国の審査状況を注視してまいります。また、九州電力に対しては国の審査に真摯に対応するよう求めております。
現在、3号機は通常運転中であり、4号機は7月27日から定期検査が行われています。玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう、取り組んでまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用について申し上げます。
6月末に防衛省はオスプレイの移駐に必要な工事を終え、私は佐賀駐屯地開設前の7月7日に隊庁舎などを視察しました。さらに、9月1日に再度駐屯地を訪問し、青山司令をはじめ隊員の皆さんと、オスプレイの災害時の活動や地域活動等について意見交換を行うとともに、V‐22オスプレイに試乗いたしました。自衛隊と地域が互いに敬意を持って共生していく、未来志向の関係をつくりあげていくよう、力を尽くしていきたいと考えております。
7月9日に駐屯地が開設し、隊員やオスプレイの移駐が順次進められ、8月12日に17機すべての移駐が完了しました。オスプレイは7月28日に佐賀駐屯地周辺で訓練を開始し、県外の駐屯地への飛行を始めるなど段階的に訓練範囲を拡大しています。今後、部隊訓練等の本格化に加えて、夜間飛行訓練及び低空飛行訓練が始まります。引き続き訓練の動向等を注視してまいります。
9月7日に行われた駐屯地の開設式典では、この10年間一つ一つ丁寧に積み重ねてきたことが今につながっていること、地域に愛され頼られる存在として信頼を得られていくことを願っていることなどを申し上げました。中谷防衛大臣と意見交換をし、飛行の安全、九州佐賀国際空港の機能強化について改めてお伝えしました。その内容は、飛行の安全を最優先に県民の信頼を損なわないように一つ一つ丁寧に対応していただきたいこと、空港と駐屯地それぞれの機能をより発揮するためには「滑走路延長」と「平行誘導路整備」が必要不可欠であり、さらに有明海の漁業者のことを考えると同時の工事が必要であることなどです。同時工事の実施に向けて、引き続き防衛省と協力して取り組んでまいります。防衛省にはこの10年間を大切にし、一つ一つのことに真摯な姿勢で対応していただき、駐屯地と地元の間で、お互いに信頼を積み重ねていく関係が構築されるようになって欲しいと思います。飛行の安全は何よりも大切です。慎重にも慎重を重ねて安全を最優先に運用していただきたいと思います。
次に、有明海の再生について申し上げます。
6月から有明海漁協は国の有明海再生加速化対策交付金事業を活用し、サルボウの採苗器の設置や海底耕うんなどに取り組まれております。県としては、こうした取組が、有明海が再び光り輝くことにつながっていくことを期待しており、やれることは何でもやるという強い気持ちで支援していきます。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。これからも、力を合わせて全力で取り組んでまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
8月19日に、長崎県の大石知事、JR九州の古宮社長、私の三者で意見交換を行いました。合意していたにも関わらずフリーゲージトレインの導入を断念した国の責任を三者で確認し、引き続き地元三者で意見交換していくこととしております。もしフル規格で何かを行うのであればフリーゲージトレインではない新しい話としてしっかりと地元三者で合意した上で進めなければならないことを私は申し上げました。北陸新幹線は整備内容について地元での合意形成及び与党プロジェクトチームの決定を経ていたにも関わらず、現在、財政負担やルートなどについて沿線自治体や議会、住民からそれぞれの立場で様々な声があがっております。ルートの再検証の動きも出てきており、様々な問題が顕在化しています。このような状況をみましても、一つ一つ丁寧に地元で合意形成していくことが大切だと考えております。引き続き他地域の動向等も見据えながら、慎重に議論してまいります。
次に、県立大学について申し上げます。
私は、教育、産学連携、エッセンシャルワーカーの育成など、地方にこそ、大学の果たすべき役割が大きいと考えております。経済界・市町をはじめとした各界との連携等を目的に、7月に県立大学に関するシンポジウムを開催しました。山口和範先生による講演や、山口先生と県内でまちづくりに取り組む方々とのパネルディスカッションを行い、地域における大学の価値や、大学が地域とともに成長するにはどのような視点や取組が必要かについて活発な意見が交わされました。ハード整備においては、県立大学が目指す「学生の主体的な学び」、「熱量の高い研究」に取り組みやすい環境となるよう、設計業務を進めております。地域に愛され、地域とともに成長する大学を目指し、着実に準備を進めてまいります。
続きまして、最近の県政の主な動きについて申し上げます。
まず、SSP構想の推進についてです。
この夏も多くのアスリートが国内外で躍動しました。インターハイのなぎなた女子団体で佐賀東高校が16年ぶり3度目の栄冠を勝ち取り、個人競技ではレスリング、柔道、カヌー、少林寺拳法で優勝しました。大川内健太選手は自らの持つ800メートル男子知的障がいの日本記録を更新しました。坪井夢輝選手が知的障がい者の世界水泳選手権において、4×50メートルメドレーリレーで世界新記録を樹立しました。世界レスリング連盟のランキング大会で鳥栖工業出身の須田宝選手が優勝しました。佐賀工業出身の近藤隼斗選手と妹の佐賀商業出身の美月選手が柔道グランドスラムに揃って出場し、美月選手が優勝、隼斗選手が準優勝と世界の舞台で活躍しました。SSP構想のもと、SAGA2024後にTeamSSPの一員となった山田優選手がフェンシングの世界選手権において男子エペ団体で金メダル獲得に貢献し、個人では3位となりました。
9月6日から滋賀国スポの会期前競技が始まっており、ビーチバレーボール少年男子が優勝、新体操少年男子が3位となりました。ビーチバレーボールでは金メダルに輝いた立石選手・菰田選手のペアは実はSAGA2024では2回戦で敗退し、その悔しさをバネに日々特訓に励み、見事雪辱を果たしました。去年の経験を糧に、アスリートが飛躍を遂げていくことは、SAGA2024のレガシーの一つと考えております。10月末に開催される全障スポは自県開催以外で、介助者などを含め最多160名の選手団となっております。滋賀の国スポ・全障スポでは、式典での自由なスタイルの入場行進や、3位までのメダル授与、全競技の動画配信などが実施されると聞いております。佐賀で始まった新しい取組に滋賀ならではの創意工夫が加わり、国スポ・全障スポが成長型の大会として今後につながっていって欲しいと思います。全国に呼び掛け、初めて開催している「第1回SAGAパラスポ2025」は8月のボッチャ競技を皮切りに6競技実施します。日本パラスポーツ協会、他県などの協力も得ながら、この大会が全国のパラアスリートの目標となるよう、育てていきたいと考えております。
7月に世界水泳シンガポール大会に向けカナダ代表チームがSAGAアクアで事前キャンプを行いました。大会では、サマー・マッキントッシュ選手の活躍もあり、金メダル4個、銅メダル4個という好成績を残しました。2023年の世界水泳福岡大会の際に事前キャンプをしたオーストラリア代表チームのSAGAアクアへの高い評価を受け、カナダ代表チームは佐賀を選んだと聞いております。世界のトップアスリートの中で「SAGA」の存在感がよい形で高まっていることを大変嬉しく思っております。9月には東京2025世界陸上に向けパリオリンピック金メダリストをはじめとしたセントルシアなど5ヶ国のアスリート9名がSAGAスタジアムで事前キャンプを行いました。
また、SAGAサンライズパークが、建築業界で権威ある賞の一つ「第66回BCS賞」を受賞しました。駅からのアプローチを含め、エリア全体の回遊性と統一感を高めることにより一体的な空間として新たな価値を創造していることや、SAGAアリーナの多面体のボリューム造形が評価されました。
次に、8月に行った海外の県人会訪問について申し上げます。
戦前から戦後にかけて、佐賀県からも多くの方が、北米、南米をはじめ様々な地へ移住されました。同郷の仲間で助け合い、困難な時代を乗り越えられ、地域の発展に大きく貢献されてきました。そして、佐賀を離れ長い年月が経つ今もなお、御子孫も含めて故郷佐賀のことを想っておられます。8月に南カリフォルニア佐賀県人会創立120周年記念式典、ブラジル佐賀県文化協会創立70周年記念式典が開催され、私と宮原議長が訪問し、県民を代表して式典に参加された皆さんに慰労と感謝の気持ちをお伝えしました。私から県産品や観光資源など佐賀の現在を紹介し、SSP構想やSAGAサンライズパーク、世界海洋プラスチックプランニングセンターなど佐賀から世界を見据えた取組には大きな関心が寄せられました。これからも世界にいる佐賀の仲間とも力を合わせ、挑戦を続けてまいります。
次に、佐賀農業の気候変動対応について申し上げます。
今年、佐賀県を含む九州北部は統計開始以降最も早い梅雨明けとなり、その後厳しい暑さが続いております。県では、こうした猛暑の中でも安定した収量、品質を維持できる新品種や新技術の開発に取り組んでおります。今年産から本格的な作付けが始まったお米の新品種「ひなたまる」もその一つです。高温条件下における農林水産業の適応策等をとりまとめ、生産者などに周知を図っております。気候変動の中においても、生産者が安定した供給を続けられるよう、取り組んでまいります。
次に、唐津市今坂地区の砂防ダム整備について申し上げます。
令和5年7月九州北部豪雨で土石流が発生した唐津市浜玉町平原今坂地区において、住民の方や地元の小学生を対象に砂防えん堤工事現場見学会を7月に開催しました。
地元の方々に工事の進捗や砂防ダムの役割などを知っていただく機会になったものと考えており、完成に向けて着実に工事を進めていきます。引き続き人命を守ることを第一に、被害ができる限り軽減されるよう、佐賀県内水対策「プロジェクトIF」をはじめとした防災・減災対策に取り組んでまいります。
次に、佐賀県フィルムコミッションの第11回JFCアウォード最優秀賞の受賞について申し上げます。
佐賀県フィルムコミッションは今年で設立20周年です。これまで国内作品はもちろん全国に先駆けて東南アジア作品の誘致に取り組んできました。2023年のマレーシアドラマ「Frоm Sаgа,WithLоve」の誘致などが評価され、全国の中から優れたフィルムコミッションを表彰する第11回JFCアウォードにおいて最優秀賞を受賞しました。2019年から作品の誘致に取り組み、コロナ禍を挟む中でも粘り強く交渉し、撮影前には脚本家、監督との意見交換などを重ね、タイトルに「Saga」を入れることや、県産品等をPRするシーンの追加を実現しました。今後も作品の誘致を通して、佐賀の価値を国内外へ届けてまいります。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
今回の補正予算案の編成に当たりましては、6月補正予算編成後の情勢の推移に対応するため、早急に措置を要するものについて所要額を計上することといたしました。
この結果、その総額は、歳入歳出とも、それぞれ、
一般会計 約58億6,300万円
特別会計 約32億3,400万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約5,280億4,500万円
特別会計 約2,014億1,000万円
となっております。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、中小企業、就労継続支援事業所への物価高対策についてです。
中小企業の人材確保のための設備投資や、物流事業者の物流効率化等について引き続き支援することとしました。就労継続支援事業所における生産性向上の設備投資も継続的に支援し、工賃向上を後押しします。厳しい状況においても前を向き頑張っている事業者を引き続き支援してまいります。
次に、陶土価格高騰緊急支援事業について申し上げます。
8月に陶土の原料である天草陶石の価格が急激に上昇し、県内産の陶土の価格も上がりました。陶土は陶磁器事業者、ひいては産地の維持に不可欠なものです。県内の生地製造事業者や窯元などに対して、陶土の価格上昇分に相当する経費について支援することとしました。生産性向上や価格転嫁の支援も進め、佐賀が誇る陶磁器産業を未来につないでまいります。
次に、佐賀酒・酒米応援緊急パッケージについて申し上げます。
米価の高騰により、酒米農家が主食用米に作付転換し、酒蔵の酒米確保が難しくなっております。主食用米と酒米の販売価格差相当の応援金を創設し、これまで佐賀酒を支えてこられた酒米農家を支援することとしました。あわせて酒米農家に感謝の気持ちを伝え顕彰する制度も創設します。また、現在取り組んでいる酒米の新品種開発も加速化していきます。今年から取り組んでいる酒蔵への支援に加えて、新たに酒米農家を応援していくことで、佐賀の誇りである佐賀酒を守れるよう、取り組んでまいります。
次に、平和の想い・記憶継承事業について申し上げます。
戦後80年を迎え、人口の約9割が戦後生まれとなり、戦争の悲惨さに触れることが希薄になっている現代において、戦争の記憶と平和の尊さを未来へとつないでいくことは大切です。高齢化する御遺族の想いを深く受け止め、これまで20年ごとに開催していた県戦没者追悼式を10年前倒しし10月に開催します。追悼式において、県内中高生が御遺族を取材し、その貴重な肉声をアーカイブ化することとしました。平和への想いなどを込めた御遺族の肉声を中高生が様々な機会を通じて未来に向けて広く伝えてまいります。
次に、世界の文化創造拠点ARITAプロジェクトについて申し上げます。
この度、日本を代表する本物の文化を体感できる、世界レベルの文化観光エリアの創造を目的とした文化庁補助事業ACEプログラムに採択され、5か年で概算事業総額約12億円の大型プロジェクトに取り組むこととしました。全国の採択8件のうち九州からは佐賀県のみです。唯一無二の歴史を持ち、今なお革新を続ける有田町において、世界中から本質的な価値を求める人々を呼び込み、有田や佐賀県の文化に触れていただき、世界に向けて新たな価値を生む文化創造拠点を創出してまいります。
次に、「ツール・ド・九州2026」開催準備事業について申し上げます。
ツール・ド・九州は、2023年から、九州の経済団体と各県が一体となり開催している国際自転車ロードレースです。九州の複数のエリアを舞台に開催され、海外からもトップクラスの選手が参戦し、注目が集まる大会です。佐賀を世界に発信する大きなチャンスになると考え、2026年大会に参画することとしました。県としては、波戸岬周辺をスタートに、ルート・グランブルー、唐津城、虹の松原など唐津のすばらしさを堪能でき、福岡天神へと向かうルートを検討しております。
オリジナルサインの設置などルート・グランブルーの磨き上げに係る予算も今議会に提案しております。福岡糸島の隣に位置する唐津の存在感を国内外に発信できるよう、準備を進めてまいります。
予算外議案といたしましては、条例議案として4件、条例外議案として13件となっています。
乙第46号議案「佐賀県波戸岬少年自然の家設置条例(案)」につきましては、自然の中における少年の健全な育成といったこれまでの設置目的に、交流人口の増加及び地域の振興に寄与することを新たに加えるものです。波戸岬エリアのポテンシャルを活かしながら、利用者と地域との新たな交流を創出してまいります。
最後になりますが、国の形にも関わる国民的議論が必要な事柄において、目先のことばかりを重視した論調や、自分ファーストの傾向が徐々に広がりつつあるように感じております。7月に開催された全国知事会議の宣言にも、国政に将来に向けての長期ビジョンに基づいた政策議論を望むことが盛り込まれました。
参議院選挙の争点の一つになった物価高対策の給付金や減税であれば、物価高の原因を国が国民に分かりやすく説明した上で、対策となる給付金や減税の効果、財源を示し、国全体でお互いの考えを尊重しながら様々な意見がたたかわされることが大切だと思います。そうした中で、税金の所得再分配の役割や、給付と負担のバランスについて将来を見据えた骨太な議論が国民間で進んでいって欲しいと思います。8月に国は米価の高騰について要因や対応の検証などを示しました。高騰の理由に需給の見通しが十分でない中、生産量が足りていると判断したことが挙げられ、国は事実上の減反政策を見直し、増産に舵を切ることを表明しました。食料安全保障を視野に入れ、増産時に値崩れを防ぐ方策、農家が持続的に安定した生産ができる仕組みなど丁寧に議論すべき大切な課題が多々あると考えます。国には日本の食を支える地方農家の現場を踏まえた鳥瞰的な議論をしていただきたいと思います。
また、これまで築いてきたこの国の様々な仕組みが時勢に追いついていないと考えております。診療報酬は2年に1度改定されますが、その間も物価は上がり、公立・民間とも病院経営が厳しい状況です。自治体と国の機動性には大きな差があります。佐賀県は概ね3か月おきにその時点に応じた実質的な補正予算を編成するなどし、スピード感を持ち迅速に対応していますが、国は経済対策等新たに補正予算を編成し施策を実行するのに相応の時間を要します。新型コロナウイルス等の危機管理対応でもわかるように、事態の変化や支援体制などを的確に把握しているのは現場である自治体であります。
国において、あるべき国の形として、国が真の意味で地方を重視していくことが国自体を前に進めることを認識し、国が地方に大胆に任せることの整理が改めて必要だと私は考えております。国は大きな方向性を示し、地方によって異なる想いや考え方、その政策を尊重する。地方は現場に根差し地域を想い、自らの力で地域を輝かせるための処方箋を生み出していく。そうした国と地方の関係が必要だと思います。
そして、これまでの常識や経験の延長線上では予測できない不確実性の時代にこそ、未来に向けたグランドデザインを示すリーダーの役割が大切だと考えております。佐賀県においては私自身も研鑽を積み、自らを常にアップデートし、世界の趨勢や時代の変化を俯瞰しながら、佐賀が目指す姿を真っすぐに提案していきたいと思います。この個性豊かな佐賀から世界に向けて新たな価値を創造し続けることに、県民の皆さんとともに全力で取り組んでまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。