令和6年2月定例県議会の開会に当たり、最近の動き、提案事項などについて御説明申し上げます。
はじめに、元日に発生した令和6年能登半島地震に関して申し上げます。
私からも犠牲となられた方々に対しまして、謹んで哀悼の意を表し、御冥福をお祈りいたしますとともに、被災者の皆様方に心からお見舞いを申し上げます。
本県では、地震発生直後から被害状況等の情報収集に当たり、また被災地支援チームを立ち上げ、現地からの要請に即応できるよう準備を進めてまいりました。1月7日からは、警察による行方不明者の捜索や救出救助を行う広域緊急援助隊の派遣をはじめ、県内医療機関による災害派遣医療チーム(DMAT)や災害派遣精神医療チーム(DPAT)などが派遣されました。また、市町と協力して保健師や家屋被害調査等を行う職員・教員を派遣しております。被災者の皆様が一日も早く平穏な日々を迎えられますよう、今後も被災地からのニーズを踏まえ、支援を続けてまいります。
災害は、いつ、どこで起こってもおかしくありません。県では、今回の地震について、これまでに得られた情報を基に、佐賀県で同様の災害が発生した場合の備えと対応を検証しております。1月30日に開催した「第11回佐賀県実動機関トップ連絡会議」においても率直な意見交換を行い、併せて、災害発生時において自己完結型の実動機関との緊密な連携がいかに大切であるかということなどを再確認しました。
災害対応をはじめとする危機管理は、県民に対する最大の使命であり最優先事項であります。一度災害が発生すれば、何よりまず人の命を守ることに全力を尽くします。ヘリ等を活用した速やかな災害の全体把握、情報共有、情報発信と併せて、できる限り早い段階で実動部隊を現地に投入することに注力するという初動対応が何よりも重要であると考えています。そして、誰がどこにおられるのかという安否情報は部隊の効果的投入の観点でとても重要であり、大災害においては安否不明者の情報を公表することも大切なことだと考えております。また、都道府県域を超えた広域的な防災機能も重要です。本県は、九州各地へのアクセスに優れ、九州佐賀国際空港が給油や支援物資の輸送拠点としての役割を果たせるほか、国内外で活躍する多数の災害支援CSOが本県に拠点を置いて活動しているという強みもあるなど、地理的にも人材的にも高いポテンシャルを有しています。佐賀県が広域防災拠点として、九州全体の対応力強化の役割を担っていきたいと考えております。
続きまして、当面の諸課題への対処方針について申し上げます。
まず、玄海原子力発電所についてです。
現在、定期検査中の3号機は通常運転再開に向けた調整運転が行われており、4号機は通常運転中です。
本県では、1月30日に玄海町で開催した「佐賀県原子力環境安全連絡協議会」において、玄海原子力発電所周辺で能登半島地震と同様の地震が発生した場合の対応等について、九州電力や地元関係者の方々と活発な意見交換を行いました。
今回の地震を受け、現在国において自然災害と原子力災害が複合的に発生した場合の屋内退避のあり方や、原子力発電所にかかる現在の規制基準の見直しの必要性などについて検討が行われています。県としては、引き続き、国の検討状況を注視してまいります。
玄海原子力発電所とは、廃止措置を含めて、これからも長い年月にわたり関わり続けなければなりません。今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
次に、佐賀空港の自衛隊使用要請について申し上げます。
駐屯地の整備については、1月29日、県から佐賀市、JAさが、有明海漁協に対して公害防止協定に基づく空港施設の増設等に関する事前協議を行いました。この協議を経て、県は2月9日に空港施設内の土地の使用を許可し、防衛省は10日から駐屯地と滑走路をつなぐ接続誘導路の工事に着手しました。
また、排水対策については、防衛省は昨年12月11日から海水混合施設の工事に着手し、現在掘削工事が進められています。
事業主体である防衛省には、工事期間中はもちろん、駐屯地の整備後においても、一つ一つ丁寧な対応を行っていくよう、引き続き求めてまいります。
昨年11月29日に発生した屋久島沖での米軍オスプレイの墜落事故については、事故後直ちに防衛省に対して、迅速な情報提供と徹底した事故原因の究明を米当局に求めること、そしてその結果及び今後の対応についての説明を行うことについて強く要請したところです。現時点では防衛省からの情報提供はありませんが、今後とも引き続き、説明責任を果たしていくよう求めてまいります。
次に、県立大学について申し上げます。
「佐賀県立大学(仮称)」にかかる「具体化プログラム」を進めるため、1月23日、専門家チームのリーダーに立教大学経営学部長である山口和範教授に就任いただきました。山口教授は、大学の副総長や学部長を歴任されるなど大学経営の経験が豊富であるだけでなく、発展的思考をお持ちであり、現状に甘んじることなく常に前を向いていただける方です。そして、佐賀市富士町出身であり、何より「佐賀愛」に溢れる方でもあることから、県立大学構想を時代に合わせて進化させ、一緒に佐賀県立大学を創っていただける方だと考えています。
県立大学基本構想をもとに、入学定員や求める機能など具体化プログラムをスタートさせました。これから、大学の根幹となるカリキュラム内容、教員の規模、必要となる教室や設備に関するあり方の検討などを専門家チームと共に進めることとしており、必要な予算を今議会に提案いたしております。
昨年12月には、経済四団体から私と県議会議長に対し、県立大学設置の早期実現の要望がなされました。県内経済界は、様々な分野における人手不足に対する強い危機感から、人材確保策に関する協議会を立ち上げられました。今後とも、経済界と連携して、県立大学の設置も含めて人材確保の推進に取り組んでまいります。
全国的に少子化の傾向が顕著になり、人材難の中、佐賀県に関して言えば、毎年2千人以上もの若者が大学進学を機に県外に流出しています。大学を創るのには5年、卒業生を送り出すには更に時間がかかります。県立大学を有する他県の場合は、県立大学を拡充して進学の選択肢を増やすことが可能ですが、佐賀県はそもそもその機能を持っておりません。一刻も早く、多くの方に学びたいと思っていただけるような唯一無二の大学を創っていきたいと考えています。
私たちが検討を進めているのは、まさにゼロから創る大学、今だからこそ創ることができる大学です。佐賀県立大学は、時代の変化を的確に捉え、一度決めた教育内容に固執することなく常にアップデートし、長きに渡り愛され、県民の期待に応えられる大学としたい。社会は急速に変化し続けています。これまでの常識や前提では越えられない複雑多様化した社会に求められるのは、しなやかさ、すなわち人間力と社会実装力を備えた人材だと考えます。そうした人材が鳥瞰と構想をもって新しい時代を切り拓き、創り上げていくのだと思います。佐賀が新しい時代を牽引していく、そしてその佐賀を担っていく人材を佐賀県立大学が育み、輩出していく、そうした強い想いをもって取り組んでまいります。
次に、城原川ダム事業について申し上げます。
水没予定地域では、1月28日、国と城原川ダム建設対策協議会との間で用地補償の基準を定めた「損失補償基準協定書」への調印が行われ、私もこの大きな節目に立ち会いました。
水没予定地域の皆様は、ダム事業に対する様々な想いや葛藤の中で、長年住み慣れたかけがえのない大切な土地を離れるという苦渋の決断をされました。私たちは、住民の皆様のこうした決断の下にこのダム事業が成り立っているということを想い、そして住民の皆様がいかに辛い思いで決断をされたかということを後世に引き継いでいかなければなりません。長年にわたりダム問題で御苦労されてきた水没予定地域の皆様の不安な気持ちが少しでも解消し、生活再建がより円滑に進むよう、国や神埼市と連携し、これまで同様にお一人お一人に寄り添いながら、きめ細やかな支援を心掛けてまいります。
また、地域の治水対策を進めるため、一日も早いダム完成を目指した事業の推進と必要な予算の確保を、引き続き国に働き掛けてまいります。
次に、有明海の再生について申し上げます。
有明海漁協においては、2月14日、西久保組合長が福岡、熊本両県の漁業団体の代表者とともに、坂本農林水産大臣と面会され、「開門しないことを前提に有明海再生を図る」という国の方針に賛同の意向を示すとともに、国の支援により有明海再生を加速して欲しいといった要望を直接伝えられました。これを受け、坂本大臣は、「必要な支援について政府内調整を開始し、実現に向けて全力で取り組んでいく」と応じられました。
3県漁業団体の中でも、特に有明海漁協は、組合員の中に開門を求める訴訟当事者がおられます。様々な思いが交錯する中で、長年海況が好転しないことから、有明海再生が何よりも大事であり、国の支援により有明海の再生を加速化してもらいたいとの思いから、国の方針に賛同するという「苦渋の決断」をされました。
国においては、漁協のこうした思いを重く受け止め、漁協の要望にしっかりと対応してもらいたいと考えます。
有明海の水産資源については、再生のシンボルであるタイラギが12季連続休漁となるなど、依然として厳しい状況です。
また、今季の有明海のノリ養殖についても、秋芽網期は少雨の影響により12月以降はほぼ全域で色落ち被害が発生するなど、厳しい生産状況となりました。年明けからも状況は変わらなかったことから、漁業者の皆さんは海況の好転を願い、冷凍網期の開始を遅らせるなど、あらゆる手を尽くしています。冷凍網期開始後は、2月上中旬にまとまった降雨があったものの、赤潮発生の影響により、西南部地区を中心に色落ちが継続するなど、依然として厳しい状況が続いております。
来年度は漁場環境を改善するための大規模海底耕うん等の取組に加え、ノリ養殖の安定生産に資する精度の高い海況予測が可能となる新たな分析システムを開発することとし、今議会に必要な予算を提案いたしております。生産枚数・生産金額日本一奪還に向けて、引き続き、厳しい環境でも努力されている漁業者の皆さんを応援してまいります。
宝の海である有明海の再生は、国や県、市町、漁業者など有明海に関わるもの皆で取り組む課題です。これからも、関係する皆で力を合わせて全力で取り組んでまいります。
次に、九州新幹線西九州ルートについて申し上げます。
昨年12月28日に南里副知事が国土交通省鉄道局次長と面会し、未合意区間である新鳥栖-武雄温泉間について協議を行いました。鉄道局からは、これまでと同じく佐賀駅を通るアセスルートのフル規格が最も効果が高いという説明がなされ、新たな提案などはありませんでした。南里副知事からは、議論を深めるためにはアセスルートを一旦白紙にして地元で一から議論をして合意形成を図る必要があることなどを申し上げました。
西九州ルートは、新鳥栖-武雄温泉間は在来線を利用し、武雄温泉-長崎間は新線を建設してフリーゲージトレインを走行させるということで合意し整備が進められてきました。フリーゲージトレインは国が開発を断念しましたが、武雄温泉から長崎までの新線は合意のとおり完成し、時間短縮効果や新駅設置、駅周辺のまちづくりなど、期待されていた効果はほぼ得られています。
現在の状況を招いたのは、フリーゲージトレインを断念した国の責任であり佐賀県から打開しなければならないものではありませんが、引き続き様々な議論はしていきたいと考えています。
続きまして、提案事項について御説明申し上げます。
地球規模の気候変動や国際社会の分断の危機、多様性、AIの進展など複雑さを増す世界情勢の中で、佐賀県においても様々な分野における人材不足をはじめ、物価高騰や脱炭素等の課題に直面しています。佐賀県の令和6年度当初予算につきましては、こうした時代背景にあっても、佐賀県が唯一無二の地域として成長し続け、世界に誇れる佐賀づくりを一層進めていきたいとの想いで編成いたしました。
令和6年度当初予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ
一般会計 5,205億5,600万円
特別会計 約2,089億5,500万円
となり、一般会計を前年度当初予算と比較すると、約160億円の減、率にして約3%の減となっています。減少の主な要因は、新型コロナ対策について、5類移行に伴う医療提供体制の見直しなどにより約436億円の減となることによるものです。他方、通常経費については、SAGA2024開催経費、人件費や社会保障関係経費の増のほか、今日の時代背景から生じる課題を捉えた新たな取組などにより約277億円の増加となっており、各分野の施策を更に推進してまいります。
財政運営については、税収等の状況変化に応じてローリングを行い検証しています。今回、当初予算の編成に当たっても、財政調整積立金残高や将来負担比率を検証しながら予算編成を行いました。財政調整積立金残高については、令和8年度末の計画額約130億円を確保できる見通しです。また、将来負担比率については、この先2年程度がピークとなりますが、約140%程度に収まり、県債残高の減少とともに徐々に良くなっていく見通しで、安定的な財政運営ができていると考えています。
財政状況については、今後も外的要因を含め様々な事情で変化することから、常に財政規律に配慮しつつ、佐賀の未来を見据えた県政運営に努めてまいります。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、SAGA2024についてです。
いよいよSAGA2024開催の年となりました。今年は、7月下旬から「北部九州総体2024」や「パリオリンピック・パラリンピック」が開催されます。スポーツに対する熱気と興奮が冷めやらぬ中、SAGA2024が開幕するという、まさに佐賀県がスポーツで盛り上がる年です。こうしたスポーツイヤーに、体育からスポーツに変わる記念すべき初めての大会を、この佐賀の地で開催できることに胸の高まりと喜び、そして重みを感じています。
4月からは、県民の皆さんにSAGA2024に向けた機運を感じていただくべく、国スポでは県民誰もが気軽に参加できるプログラムであるデモンストレーションスポーツが、全障スポでは障害者スポーツの普及を目的としたオープン競技が始まります。また、4月から6月にかけて全国障害者スポーツ大会のリハーサル大会を開催します。ここで得られた経験や課題を踏まえ、佐賀県では初開催となる全国障害者スポーツ大会が心に残る大会となるよう準備を進めてまいります。また、開閉会式をはじめ、選手やその関係者の輸送や配宿の手配、大会を支え大会の主役の一人でもあるサガンティアの皆さんとの取組、県民全体でSAGA2024を盛り上げるムーブメントを起こす取組など、大会本番に向けて準備を着実に進めてまいります。
すべての人に、スポーツのチカラを。
SAGA2024では、「する」「観る」「支える」、スポーツに関わるすべての人が主役です。スポーツの楽しさ、素晴らしさを県民の皆さまと一緒に実感できるよう、前例のない「新しい大会」に向けて、全力で取り組んでまいります。
次に、SSP構想の推進について申し上げます。
スポーツイヤーの今年、早速元日から、佐賀のチームが全国の舞台で躍動しました。全日本実業団対抗駅伝に3年ぶりに出場したひらまつ病院は、各選手が持てる力を発揮し、チーム過去最高の24位となりました。
全国高校サッカー選手権では、佐賀東高校が堅守猛攻のスタイルでチームとしては初、佐賀県勢としては28年ぶりにベスト8となりました。また、全国高校ラグビー大会では、佐賀工業高校が23年ぶりにベスト4に進出しました。宿敵東福岡高校に準決勝で敗れはしたものの、聖地花園で不撓不屈の精神で攻め続けました。私も鹿児島国体に続いて、彼らの戦いに現地で声援を送りました。この試合に至るまでのチームの1年間に想いを馳せると胸が熱くなりました。サッカー、ラグビーの両全国大会で県立高校がベスト8以上に進出したのは佐賀県だけであります。全国の名だたる私立の常連校が上位に進出することが当たり前となっている中で、本県が進めるSSP構想と、唯一無二の学校づくりが相乗効果を発揮した成果だと実感しています。SAGA2024を大きな通過点、飛躍点とし、人材育成や就職支援などを一体的に進めてまいります。
また、西九州大学や佐賀県医師会と連携したスポーツ医科学の普及、県内外の企業と連携したスポーツホスピタリティをはじめとするスポーツビジネスの創出も本格的に進めてまいります。
SSP構想のもと、アスリートがスポーツで食べていける社会、スポーツを活かしたビジネスシーンが広がる社会を目指し、スポーツのチカラを活かした人づくり、地域づくりを一層推進してまいります。
次に、子育てし大県“さが”プロジェクトについて申し上げます。
プロジェクトを開始した平成27年度は7事業であったものが、来年度は約80の事業を展開することとしています。新たに佐賀の海や山をフィールドに子どもたちが様々な課題を克服する佐賀ならではのサバイバル体験事業にも取り組みます。また、若年世代の男女が将来のライフプランを考えて日々の生活や健康に向き合う「プレコンセプションケア」に取り組むこととしています。関係機関による委員会を立ち上げ、効果的な手法や普及啓発方法などを検討します。こうした取組が将来のライフプランを考えるきっかけになればと思っております。
次に、“さがすたいる”について申し上げます。
“さがすたいる”を更に広げ、草の根まで届くよう、新たに市町やCSO、民間事業者が行う“さがすたいる”の取組に対して支援することとしています。こうしたオール佐賀の取組を通じて、SAGA2024をきっかけとして“さがすたいる”を佐賀の地から全国に広めていきたいと考えています。
次に、様々な困難を抱えている人の想いに寄り添う取組について申し上げます。
はじめに、在宅で療養中の難病患者を介護する家族へのレスパイト支援です。家族の一時的な休息のため、人工呼吸器等を使用する難病患者の自宅に訪問看護師を派遣します。
次に、人工透析患者の通院支援です。人工透析患者や送迎する家族等の負担軽減のため、医療機関や福祉有償運送の送迎サービスに対して支援を行います。
性暴力被害者への支援については、性別にかかわらず、全ての方が相談しやすい環境に整えるべく、好生館に設置している「性暴力救援センター・さが」に、男性・男児への医療支援やカウンセリング等を拡充します。
また、障害のある子どもたちが身近な地域でより適切な支援を受けられるよう、県と県内全ての児童発達支援センターとのネットワークを構築し、連携を強化します。
さらに、障害のある方やその家族の想いに寄り添い、地域で活動する障害者ボランティアグループの活動を支援し、障害のある方との協働や社会参画を進めてまいります。
ドクターカー等で事故現場に出動した医師は、現状では搬出先に電話で容体を伝達しています。現場と搬出先との更なる連携につなげるべく、佐賀大学医学部附属病院と協働で、360度撮影可能な高性能カメラをドクターカー等に搭載し、現場で処置する医師と高度救命救急センターとの通信に映像を活用し、効果検証を行うこととしています。
次に、将来を担う介護人材の確保に向けた取組について申し上げます。
介護は「ありがとう」が多く飛び交う職場です。人と人のつながりや人が人を想う、そうしたことが心から感じられる尊い仕事です。県ではそうした介護の仕事の素晴らしさを体験してもらう取組を進めています。今年度実施したアンケート調査において、介護従事者の多くの方が介護の仕事を選んだきっかけとして「介護の体験や経験があった」と回答しています。次世代を担う子どもたちに介護の仕事に触れ、身近に感じてもらうべく、好評をいただいている「キッザケア サガ」の取組を拡充し、また新たに親子で介護現場を見学する介護ツアーや介護職員が県内の高校生等と交流する介護ミーティングなどを実施することとしています。
多くの若者が早くから介護という尊い職業に触れ、その道を目指すきっかけとしていただくことで、佐賀の将来の介護を支える人材確保へとつなげてまいります。
次に、医師を育成し県内定着を促進する取組について申し上げます。
佐賀大学医学部の卒業生の5割から6割が研修先として県外医療機関を選んでいるという若手医師の県外流出に対応すべく、県では佐賀での若手医師の育成・定着を図る「SAGA Doctor-Sプロジェクト」に取り組んでいます。来年度は、若手医師や医学生が就職先を選ぶ際に重視するとされる「学べる環境」と「人とのつながり」を佐賀で作っていくことに重きを置いて取り組んでいくこととしています。具体的には、海外留学費用の支援や医師不足の産婦人科や小児科等を対象とした専門研修中の研修資金の支援、離島や山間部での地域医療実習、県内医療機関との交流などを実施します。
佐賀の医療の将来を担う若手医師や医学生が佐賀に愛着を持ち、佐賀を選び定着する環境を創ってまいります。
次に、佐賀県の未来を拓く理系人材の育成について申し上げます。
生成AIや宇宙産業、ロボット、ビッグデータなどが社会変革の大きな要素となるSociety5.0を目指す新しい時代においては、社会課題を打開し実装する力を持った人材が求められていると考えています。小さい時からテクノロジーやデータサイエンスへの好奇心や興味関心を高めるため、様々な理系的発想や体験に触れる機会を創出することとしました。
また、昨今のデジタル人材に対するニーズの高まりの中、高校生を対象にしたデジタル人材の育成に産学金官が連携して取り組みます。企業や大学から派遣されるハイレベルな講師により、最先端デジタル技術と併せて地元学を学ぶことにより、佐賀に貢献したいという志を持った若者層を育てていくこととしております。
この佐賀の地から、科学技術やデジタル、データサイエンスの素養を持った佐賀愛に溢れる実践的人材を生み出してまいります。
次に、県民の文化芸術活動を応援する取組について申し上げます。
文化芸術の裾野の活動を支えるため、県内文化芸術団体が行う創造的な舞台公演や作品展示等の新たな取組に対して支援を行うこととしました。
SAGA2024の年だからこそ県内の文化芸術活動を応援し、本県の文化のチカラの向上につなげてまいります。
次に、江藤新平の復権について申し上げます。
江藤新平は、明治新政府において、東京奠都をいち早く提唱したほか、三権分立に基づく国家制度の設計、憲法や民法などの法典編纂、国民皆教育制度や民主的な司法制度の導入など、現代に続く日本のルールを作り、多くの功績を残しました。一方で非業の死を遂げた佐賀戦争に起因する名誉回復の遅れなどにより、必ずしも正当な評価がなされてきませんでした。
そこで、本年没後150年を機に、第一弾として今年3月から開催する特別展に加え、来年度は第二弾として我々が訴えるべきインパクトのある江藤の映像を制作し様々な場面で発信します。その比類なき功績や「人民のために」という信念を貫いて明治日本の新たな国家づくりに尽力した志を県内外へ広めることで、江藤新平の復権を図ってまいります。
次に「ロマンシング佐賀プロジェクト」について申し上げます。
人気ゲーム「サガ」シリーズを手掛けるスクウェア・エニックス社とは、2014年以来特別な関係を紡ぎながらゲームの世界観と佐賀の本物を融合させた様々なコラボレーションを展開してきました。いよいよ今年で本プロジェクトは10周年を迎えます。これまで築き上げてきた“ロマ佐賀資産”を最大限活用し、首都圏でのイベントのほか、県内では企画展やシンボルの設置、インバウンド向け映像の製作などを行います。10周年のアニバーサリーに相応しいコラボ事業を展開し、国内外のファンが集う“聖地・SaGa”を目指してまいります。
次に、「むしろこれから鹿島・太良プロジェクト」について申し上げます。
11月1日に鹿島市に開設したKATAラボでは、常駐する4人のメンバーが地域の皆さんのもとへ飛び回り、膝を突き合わせて語らいながら、これからの鹿島・太良を創り上げていくという志の輪を広げています。
来年度は、このエリアの素晴らしさをゆっくりと体感するスローツーリズムのエリア実現に向けて、酒蔵などの老舗が残る趣のあるまちなみを活かしたまちづくりワークショップや、地元の生産者とクリエーター、シェフとのコラボによる食のイベントなどにも取り組んでいきます。地域の皆さんの熱い想いを大切に、鹿島・太良のここにしかない真の豊かさとここにしかない本物の価値を際立たせるこのエリアプロデュースを力強く進めてまいります。
次に、県内在来線でのICカード利用エリアの拡大について申し上げます。
県内では、JR佐賀駅から西側のエリアは現在ICカードが利用できません。このうち、佐賀駅から有田駅までの間について令和6年度中にICカードの利用エリアが拡大します。これは、令和4年4月に私からJR九州の古宮社長と長崎県の大石知事に直接提案し、三者で協議を進めた結果、佐賀-佐世保・ハウステンボス間への導入合意に至ったものです。
利用開始に合わせ、オリジナル記念ICカードの発行やPRなど、JR九州や沿線市町と一緒に記念キャンペーンを展開してまいります。
次に、土産品の磨き上げを行う「S-1プロジェクト」について申し上げます。
SAGAアリーナにおけるイベントは、今後とも県内に大きな経済効果を生み出す可能性に溢れています。1月12日と14日の金曜日と日曜日に、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さんによる単独でのアイスショーが、全国3会場のうちの1つとして開催され、国内外から詰めかけたファンを魅了しました。その間佐賀に宿泊された方も多く、羽生さんの名前にちなんだポップアップに心を掴まれ「ゆずブレンド・うれしの紅茶」、「ゆずこしょう」など佐賀のお土産をたくさん購入されました。3日間で1年間分を売上げた商品もあったと聞いています。
SAGA2024には、県内外から延べ約70万人もの皆さんが参加される予定です。県では、商工団体を主体とした土産品の磨き上げによるグランプリの開催や洗練されたポップアップなどによる売場づくりなどの取組を支援することとしています。この絶好の機会を逃すことなく、佐賀の土産品の販売増、リピーターの獲得につなげるよう取り組んでまいります。
次に、キャッシュレス普及の加速化について申し上げます。
国内外の観光客をはじめキャッシュレスニーズが更に高まっている中、県内のキャッシュレス支払率は全国45位の16.3%と伸び悩んでおります。県内事業者からは、キャッシュレス支払いは省力化や新規顧客開拓などメリットがある一方で、端末導入費用が必要となることや、売上代金の入金までの期間が長く手元資金が少なくなるなどのデメリットもあるとの声があります。こうした課題を解消すべく、県内の金融機関とタッグを組み、キャッシュレスの普及促進を図ることとしています。県がキャッシュレス決済端末の導入にかかる経費を支援し、金融機関が端末導入の働きかけや、入金期間をこれまでの2週間から3日に短縮することに取り組みます。
キャッシュレス普及により、消費者の利便性向上はもとより、事業者の業務効率化や経営改善に加え、インバウンド需要の取り込みにつなげてまいります。
次に、「さが園芸888運動」について申し上げます。
これまで、トレーニングファームや園芸団地の整備による担い手の確保・育成、ハウス整備や省力化機械の導入への支援、「いちごさん」や「にじゅうまる」等のブランド確立などに取り組んでまいりました。こうした取組を更に加速化させ、優れた技術を持つ農家がトレーナーとなり研修を行っていただくミニトレーニングファームを新たに4箇所、いちごなどの園芸団地を新たに3箇所整備することとしています。また、生産資材価格が高止まりする中で初期投資を抑えることができる中古ハウスについて、産地全体で新規就農者などに継承していく仕組みづくりを進めてまいります。さらに、本日が販売開始日であり、誕生4年目となる「にじゅうまる」のブランド拡大のため、出荷期間の長期化等に対応する新たな長期貯蔵技術の開発を行うこととしています。
全国の意欲ある農業の担い手が一堂に会する全国農業担い手サミットが、令和7年1月22日からの2日間、本県SAGAアリーナで初めて開催されることも正式決定しております。
引き続き、市町やJAなど関係機関と一丸となって「さが園芸888運動」を進め、本県の素晴らしい財産である農業の担い手と産地を次の世代につないでいけるよう取り組んでまいります。
次に、海洋プラスチック問題への取組について申し上げます。
気候変動により豪雨災害など異常気象が地球規模で頻発し、地球温暖化対策は世界のあらゆる国・地域が取り組まなければならない問題です。昨年10月に開催された九州地域戦略会議では、佐賀県からの提案で「佐賀宣言~脱炭素社会の実現に向けた九州地域行動宣言~」を取りまとめました。
この地球温暖化問題と関連のあるものとして海洋プラスチック問題があります。近年、唐津市や玄海町の海岸では、毎日大量のプラスチック類等が漂着しており、観光や漁業等への影響が出ています。九州北部地域は、海流、季節風、海岸地形、海峡などの自然環境から、日本最大級の海洋ゴミ漂着地との調査結果もあります。海洋漂着物のうち、特に、プラスチック類は、半永久的に分解しないことから、世界的にも生態系や環境への悪影響が懸念されます。
県では、森川海人っプロジェクトの一環として、令和3年10月から唐津市や地元CSOなどと連携し、波戸岬において、ビーチクリーンアップイベントや海洋漂着物専用の回収箱「拾い箱」の設置等を進めてまいりました。今回、海洋プラスチック問題の解決を目指す場として、世界初の「世界海洋プラスチックセンター(仮称)」を波戸岬エリアに整備することといたしました。センターには、再生ラボや研究ラボのほかギャラリーやカフェなどを設け、海洋プラスチックの回収・再生、アップサイクル体験、世界への情報発信等を行います。本県のパートナーであるフィンランドやタイは、海洋プラスチックの削減や再資源化に積極的に取り組んでおり、こうした分野においても、両国との交流等を進めていきます。
一人一人の学びと行動変容を促し、佐賀から海洋プラスチック問題の解決を目指してまいります。
次に、「SAGA BLUE PROJECT」について申し上げます。
私は知事就任直後から、ハード・ソフトの両面から交通事故防止に取り組んでまいりました。交通事故死亡者数は平成26年が56人だったのに対し、令和5年は13人と全国最少となりました。一方で非常に残念でなりませんが、今年に入り既に4人もの尊い命が失われています。交通事故の更なる減少を目指し、一度事故が発生すれば、死亡事故につながる恐れのある通学路等の生活道路において、車の速度抑制効果のあるハンプや狭さく等の整備を図る市町に対して新たに支援を行うこととしています。
人の命は何よりも重いものです。佐賀県は人の命を見つめる県として「SAGA
BLUE PROJECT」を更に進め、交通事故で人の命がなくなるということを本当にゼロしていく、そうした強い想いで努力を積み重ねていきたいと思います。
次に、佐賀を支える社会資本の整備について申し上げます。
有明海沿岸道路と、南北軸となる佐賀唐津道路が接続する「Tゾーン」については、橋梁や地盤改良、盛土の工事を進めており、新たに国道207号と接続する(仮称)嘉瀬インターチェンジの工事に着手するなど、事業の一層の進捗を図ってまいります。福富鹿島道路については、先行して進めている鹿島側で、橋梁区間の調査・設計を更に進めます。大川佐賀道路については、(仮称)川副インターチェンジへの延伸に向けて着々と整備が進められます。また、佐賀唐津道路の多久佐賀道路(1)期については、地元説明会が開催されており、具体な道路の構造など地元との設計協議が進められています。
県東部地域においては、「佐賀県・鳥栖市サザン鳥栖連携プロジェクト」の一環として整備を進めている県道鳥栖朝倉線がいよいよ3月17日に開通し、現在整備が進められている小郡鳥栖南スマートインターチェンジについても完成の姿が見えてきています。これらの開通等により交通網の更なる充実による物流の効率化や、周辺開発や企業誘致の促進が期待されます。
引き続き、地域の発展と県民の暮らしを支える基盤として、広域幹線道路やくらしに身近な道路の整備を着実に進めてまいります。
伊万里港については、半導体産業の投資が進む久原地区において、臨港道路の4車線化に向けた整備に取り組んでおり、楠久津交差点の改良に続き、橋梁の拡幅等を進めてまいります。また、県内や近県には伊万里港未利用の輸出入貨物がまだ多く存在していることから、新規利用者の開拓と他港からの利用転換を進めるため、荷主や物流事業者への助成制度を創設します。引き続き港湾機能の強化や積極的なポートセールス等により、伊万里港の飛躍につなげてまいります。
次に、令和5年度補正予算案の概要について申し上げます。
補正予算の編成に当たりましては、11月補正後の情勢の推移に対応することといたしており、今回提案いたしました令和5年度2月補正予算案の総額は、歳入歳出とも、それぞれ
一般会計 減額 約136億 700万円
特別会計 約38億5,600万円
となり、これを既定の予算額と合わせますと、本年度の予算総額は、
一般会計 約5,676億6,500万円
特別会計 約2,147億6,100万円
となっております。
国の補正予算を活用した経済対策及び物価高騰対策で約60億円の増額を行う一方、年度末の事業精算などにより約196億円の減額となり、2月補正の減額幅は過去最大となっております。その要因としては、新型コロナ対策の減や九州北部豪雨災害対策の減が重なったことによるものです。
次に、予算案の主な内容について申し上げます。
まず、2024年問題への対策について申し上げます。
今年4月から、物流やバス・タクシー事業者に対する時間外労働の上限規制が適用されます。輸送力や人手が不足し、県民生活や県内経済への影響が懸念されることから、この2024年問題への対策として「佐賀型2024年問題支援パッケージ」を実施することとしました。バス・タクシー事業者に対しては、運転手確保のための会社説明会の開催や配車アプリの導入などを支援します。物流事業者に対しては、業務の効率化に資する予約受付システムの導入や電動リフトの設置、女性が働きやすい職場づくりにつながる施設や設備の整備などを支援します。これに加え、価格転嫁を官民連携で円滑に進めるため、経済団体などの関係機関と連携協定を締結することとしています。
次に、中小企業等に対する支援について申し上げます。
県では、昨年10月に佐賀型賃金UPプロジェクトを立ち上げ、小規模事業者の賃金引上げや収益力向上などを支援してまいりました。この度、現場の声を踏まえ支援を拡充することとしました。賃金UP支援補助金の対象に中小企業を追加し、また昨年に引き続き、ものづくり企業の大規模設備投資に対する支援を行います。あわせて、従業員がいない事業者に対して新たに生産性向上の取組に対する支援制度を創設します。中小企業等の持続的な賃上げや生産性向上が図られるよう、関係機関と連携した支援を推し進め、県内経済の好循環へとつなげてまいります。
次に、農家や漁家に対する支援について申し上げます。
畜産農家は、配合飼料の多くを輸入に頼っています。飼料価格の高止まりによって、経営に大きな影響を受けています。穀物相場や為替の影響を受けにくい飼料体系への転換を進めるべく、県独自の対策として配合飼料の主な原料である子実用とうもろこしの県内での生産拡大に必要な機械の導入に対し支援することとしました。このほか、改めて農家に対しては堆肥の利活用への支援やヒートポンプの再整備などへの支援、また漁家に対しては漁船の船底清掃に対する支援を行います。物価や燃料価格の高騰の状況下にあっても、農業や漁業を続けられるよう、経営の転換を引き続き支援してまいります。
次に、介護・福祉事業者への支援について申し上げます。
介護・福祉の分野では、サービス利用者の増加に伴い、担い手不足が重要な課題である中、賃金は他の職種よりも低水準となっています。介護・福祉職員や看護補助者の賃金引上げを行う事業所に対して、公定価格が見直されるまでの間、賃金引上げに相当する額を支援することとしました。また、賃金引上げに取り組む事業所を対象に現場の職員の負担軽減につながる先進機器の導入費用を支援することとしました。
予算外議案といたしましては、条例議案として25件、条例外議案として8件となっています。
最後になりますが、私は知事就任以来「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を県政の基本理念とし、これまで一貫して「人」を基軸とした県政運営を行ってまいりました。
これまでの佐賀を創り、支えてきたのは「人」です。そして、これからの未来の佐賀を創り、支えていくのも「人」です。
佐賀藩10代藩主鍋島直正公は、教育・人づくりが佐賀藩の未来にとって重要であるとの強い信念を持ち、藩校「弘道館」では、身分にかかわらず、全ての藩士の子弟が学ぶことができました。弘道館をはじめ、教育・人づくりへの豊かな土壌がこの佐賀の地にあったからこそ、下級武士の家で誕生した江藤新平もその志を育み、新しき世に挑み、稀代の偉人として現代日本の礎を築くことができたのだと思います。
AIなどの技術はこれまでにないスピードで進化を遂げている一方で、気候変動や紛争などで世界の不確実性はますます高まっています。こうした時代の変革期だからこそ、連綿と受け継がれ、築き上げられた「伝統」というものが未来への礎として大きな価値を持つと考えます。佐賀には先人たちが挑戦を続け、紡いできた世界に誇るべき伝統があり、その伝統があるからこそ今の佐賀があるのだと思います。
挑戦なくして、伝統なし。
未来を見据えて挑戦を続ける、そうして伝統は守られ、受け継がれ、それが礎となり新しい時代を切り拓くことができる。そして、その原動力が「人」であるからこそ、私は「人」にこだわり続けます。令和6年度予算においても、「人」にこだわって編成させていただきました。
人へ投資することは未来へ投資するということです。挑戦する人たちを後押ししたい。そして、挑戦する人たちが佐賀の新時代を創り、支えていく。「人への投資」は県民の希望の光となることを確信しています。50年後、100年後にも「この国には佐賀がある」。普遍的価値を創造する本物が凝縮した世界に誇れる「さが新時代」を県民の皆さんと共に創ってまいります。
以上、今回提案いたしました議案などについて御説明申し上げました。
よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。