令和3年6月定例会 意見書案と採決状況
意第5号
可決
地方財政の充実・強化に関する意見書(案)
新型コロナウイルスの出現により、いま地方自治体には新たに多くの行政需要が発生している。ワクチン接種体制の構築、防疫体制の強化、「新しい生活様式」への変化を余儀なくされた市民の日常生活から発生する問題など、あらゆる課題に即時の対応が求められている。それと同時に、医療・介護など社会保障への対応、子育て支援策の充実、地域交通の維持・確保など、少子・高齢化の進展とともに、従来からの行政サービスに対する需要も、これまで以上に高まりつつある。しかし、現実に公的サービスを担う人材は不足しており、疲弊する職場実態にある中、近年多発している大規模災害、またデジタル・ガバメント化への対応も迫られている。
こうした地方の財源対応について、政府は6月18日に「骨太方針2021」を閣議決定した。その中で「2022年度から2024年度までの3年間は、地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2021年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する」ことが盛り込まれた。しかし、今後も新型コロナウイルスへの対応により巨額の財政需要が見込まれる中、2022年度以降の地方財源を十分に確保することが重要である。
このため、2022年度の政府予算と地方財政の検討にあたっては、コロナ禍による新たな行政需要なども把握しながら、歳入・歳出を的確に見積もり、地方財政の確立をめざすよう、政府に以下の事項の実現を求める。
記
1 新型コロナウイルス対策として、ワクチン接種体制の構築、感染症対応業務を含めた、より全体的な保健所体制・機能の強化、その他の新型コロナウイルス対応事業、また地域経済の活性化まで踏まえた、十分な財源措置をはかること。
2 子育て、地域医療の確保、介護や児童虐待防止、生活困窮者自立支援など、急増する社会保障ニーズが自治体の一般行政経費を圧迫していることから、地方単独事業分も含めた十分な社会保障経費の拡充をはかること。また、人材を確保するための自治体の取り組みを支える財政措置を講じること。
3 デジタル・ガバメント化における自治体業務システムの標準化については、自治体の実情を踏まえるとともに、目標時期の延長や一定のカスタマイズを可能とするなど、より柔軟に対応すること。また、地域経済を活性化させるためにも、デジタルシステムの標準化による大手企業の寡占を防止すること、また地域での人材育成をはかるなど、地域デジタル社会推進費の有効活用も含めて対応すること。
4 「まち・ひと・しごと創生事業費」として確保されている1兆円について、引き続き同規模の財源確保をはかること。
5 2020年度から始まった会計年度任用職員制度について、今後も当該職員の処遇改善が求められることから、引き続き所要額の調査を行うなどして、さらなる財政需要を十分に満たすこと。また、処遇改善額が明確となるよう配慮すること。
6 特別交付税の配分にあたり、諸手当等の支給水準が国の基準を超えている自治体に対して、その取り扱いを理由とした特別交付税の減額措置を行わないこと。
7 森林環境譲与税の譲与基準については、より林業需要の高い自治体への譲与額を増大させるよう見直すこと。
8 地域間の財源偏在性の是正にむけては、偏在性の小さい所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、抜本的な改善を行うこと。
また、コロナ禍において各種地方税の軽減措置等が行われたことはやむを得ないものの、各種税制の廃止、減税を検討する際には、地方6団体などを通じて、自治体の意見や財政に与える影響を十分検証した上で、代替財源の確保をはじめ、財政運営に支障が生じることがないよう対応をはかること。
9 地方交付税の財源保障機能・財政調整機能の強化をはかり、市町村合併の算定特例の終了への対応、小規模自治体に配慮した段階補正の強化など対策
を講じること。
10 地方交付税の法定率を引き上げるなど、引き続き、臨時財政対策債に頼らない地方財政の確立に取り組むこと。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出する。
令和3年7月 日
佐賀県議会
内閣総理大臣 菅 義偉 様
衆議院議長 大島 理森 様
参議院議長 山東 昭子 様
財務大臣 麻生 太郎 様
総務大臣 武田 良太 様
厚生労働大臣 田村 憲久 様
農林水産大臣 野上 浩太郎 様
経済産業大臣 梶山 弘志 様
内閣官房長官 加藤 勝信 様
内閣府特命担当大臣 西村 康稔 様
(経済財政政策)
まち・ひと・しごと創生担当大臣
内閣府特命担当大臣 坂本 哲志 様
(地方創生)
デジタル改革担当大臣
情報通信技術(IT)政策大臣 平井 卓也 様
以上、意見書案を提出する。
令和3年7月5日
提出者 全議員
佐賀県議会議長 藤木 卓一郎 様