厚生労働大臣は、2013年から2015年にかけて、生活保護基準のうち日常生活費の基準となる生活扶助基準を最大10%、平均6.5%引き下げた(以下、「本件引下げ」という)。
本件引下げについて、佐賀県をはじめ全国29都道府県で最大1,027名の原告が取消し等を求めて提訴したところ、最高裁判所は、本年6月27日、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法であるとして、本件引下げを理由とする保護変更決定処分を取り消す判決を言い渡した。
国は、司法判断に従い、速やかに違法状態を是正し、違法に減額し続けた生活保護費全額の遡及支給を行ってその被害を完全に回復させなければならない。しかし、最高裁判決から既に数か月が経過しているにもかかわらず、国は未だ生活保護利用者への謝罪や被害回復の措置をとらず、違法状態を放置し続けている。
高齢者、障がい・傷病者等数百万人の生活保護利用者は、長期にわたって、生活保護法3条、8条2項に違反する「健康で文化的」な「最低限度」に満たない生活を違法に強いられ続け、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(生存権)(憲法25条)と個人の尊厳(憲法13条)を侵害され続け、多くの原告が被害回復をみることなく訴訟中に死亡するなどしている。最高裁判決に基づきすべての生活保護利用者の完全な被害回復を一刻も早く行うことが切実に求められている。
また、生活扶助基準は、自治体が行う就学援助や住民税非課税などの諸制度と連動するなどしているところ、本件引下げに伴いこれらの諸制度の対象者への悪影響も生じている。その影響の調査及び必要に応じた被害回復も行うべきである。
よって、国に対し、国の全面的な負担と責任において、被害者たるすべての生活保護利用者への謝罪及び違法に減額した生活保護費全額の遡及支給等被害回復の措置を速やかにとること並びに生活扶助基準と連動するなどしている諸制度への影響調査と必要に応じた被害回復の措置をとり、一刻も早く全面解決することを要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年10月 日
佐賀県議会
衆議院議長 額賀 福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 石破 茂 様
法務大臣 鈴木 馨祐 様
財務大臣 加藤 勝信 様
厚生労働大臣 福岡 資麿 様
以上、意見書案を提出する。
令和7年10月2日
提出者 武藤 明美 徳光 清孝 藤崎 輝樹 江口 善紀
野田 勝人 下田 寛 酒井 幸盛
佐賀県議会議長 宮原 真一 様