地方財政の充実・強化に関する意見書(案)
いま、地方公共団体には、急激な少子・高齢化にともなう社会保障制度の整備、子育て施策、人口減少下における地域活性化対策はもとより、感染症対策、DX化、脱炭素化、物価高騰対策など、極めて多岐にわたり新たな役割が求められている。加えて、急激に進められている自治体システムの標準化や多発化する大規模災害への対応も迫られる中、地域公共サービスを担う人員は圧倒的に不足しており、職場における疲弊感は日々深刻化している。
政府はこれまで「骨太方針2021」に基づき、2021年度の地方一般財源水準を2024年度まで確保することとしていた。しかし、増大する行政需要また不足する人員体制に鑑みれば、今後はより積極的な財源確保が求められる。
このため、2025年度政府予算また地方財政の検討にあたっては、現行の地方一般財源水準の確保から一歩踏みだし、日本全体として求められている賃上げ基調に相応する人件費の確保まで含めた地方財政を実現するよう、以下の事項を求める。
記
1 社会保障の充実、地域活性化、DX化、脱炭素化、物価高騰対策、防災・減災、地域公共交通の再構築など、増大する地方公共団体の財政需要を的確に把握するとともに、それを支える人件費を重視しつつ、現行の水準にとどまらない、より積極的な地方財源の確保・充実をはかること。
2 とりわけ、子育て対策、地域医療の確保、介護や生活困窮者の自立支援など、より高まりつつある社会保障ニーズが自治体の一般行政経費を圧迫していることから、引き続き、地方単独事業分も含めた、十分な社会保障経費の拡充をはかること。とくに、これらの分野を支える人材確保にむけた自治体の取り組みを十分に支える財政措置を講じること。
3 地方交付税の法定率を引き上げるなどし、臨時財政対策債に頼らない、より自律的な地方財政の確立に取り組むこと。また、所得税などを対象に国税から地方税への税源移譲を行うなど、より抜本的な改善を行うこと。
4 政府が減税政策を行う場合、地方財政に影響が出ないよう、その財源は必ず保障すること。その際は、「国と地方の協議の場」を活用するなどし、特段の配慮を行うこと。
5 会計年度任用職員においては2024年度から勤勉手当の支給が可能となったものの、今後も当該職員の処遇改善や雇用確保が求められることから、引き続き、その財源を措置すること。
6 自治体業務システムの標準化・共通化にむけては、その移行に係る経費と、移行の影響を受けるシステムの改修経費まで含め、デジタル基盤改革支援補助金を拡充するなど、引き続き必要な財源を保障すること。また、戸籍等への記載事項における「氏名の振り仮名」の追加など、DX化にともない地方においてシステム改修や事務負担の増大が想定される際は、十分な財政支援を行うこと。
7 地域の活性化にむけて、その存在意義が改めて重視されている地域公共交通について、公共交通専任担当者の確保を支援するとともに、こども・子育て政策と同様、普通交付税の個別算定項目に位置付け、一層の施策充実をはかること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年7月 日
佐賀県議会
衆議院議長 額賀 福志郎 様
参議院議長 尾辻 秀久 様
内閣総理大臣 岸田 文雄 様
総務大臣 松本 剛明 様
財務大臣 鈴木 俊一 様
厚生労働大臣 武見 敬三 様
経済産業大臣 齋藤 健 様
国土交通大臣 斉藤 鉄夫 様
環境大臣 伊藤 信太郎 様
デジタル大臣 河野 太郎 様
内閣官房長官 林 芳正 様
内閣府特命担当大臣 加藤 鮎子 様
(こども政策)
内閣府特命担当大臣 新藤 義孝 様
(経済財政政策)
以上、意見書案を提出する。
令和6年7月3日
提出者 全議員
佐賀県議会議長 大場 芳博 様