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佐賀空港の自衛隊使用要請について

最終更新日:

 本日は、防衛省からの佐賀空港の自衛隊使用要請に関しまして、佐賀県知事としての考えを申し上げたいと思います。
 去る8月15日、73回目として、平成最後の終戦の日を迎えました。戦争体験された方、遺族の方々の高齢化が進み、戦争を知らない世代が増えていく中で、私は、原爆被爆地の長崎県の隣県であります佐賀県の知事としても、あのような戦争の惨禍を決して繰り返してはならないと改めて強く思い、今後とも戦争のない平和な社会が続くように全力を尽くしていくことを、まずもって約束したいと思います。
 さて、今回の防衛省からの要請は、国の根幹に関わる我が国の独立と平和を守る国防・安全保障に関することであります。私自身、この要請に対して正面から、そして真摯に向き合ってまいりました。特に今から28年前、県と有明海漁協との間で、様々な、そして厳しい議論を経て公害防止協定が締結され、その中の覚書付属資料において「佐賀空港を自衛隊と共用するような考えは持っていない」という約束がなされたことについては、私も大変重く受け止めながら議論・検討を重ねてまいりました。
 その結果につきまして、これまでの経緯なども含めて御説明させていただきます。
 まず、今回の防衛省からの要請は、私が佐賀県知事に就任する前の平成26年7月に、武田防衛副大臣が来県され、古川前知事に対して3点の要請をされたことから始まりました。
 ・1点目は、陸上自衛隊が今後導入を予定しているオスプレイを佐賀空港に配備すること、具体的には、佐賀空港に隣接する場所に駐機場を整備し、離着陸には佐賀空港を使用すること
 ・2点目は、市街化が進む目達原駐屯地に配備されているヘリコプターについても佐賀空港に配備すること
 ・3点目は、沖縄の負担軽減のため、米海兵隊の訓練移転先として佐賀空港を利用すること
でありました。
 そして、佐賀空港を配備先として選定した理由については、防衛省から次のとおり説明がなされております
 ・水陸機動団配置予定の陸上自衛隊相浦駐屯地から近く、島嶼部などへの迅速かつ効率的な輸送に適していること
 ・島嶼部への侵攻に対処する水陸両用作戦には、統合運用に基づく陸海空自衛隊の緊密な連携が不可欠であり、航空自衛隊春日基地や海上自衛隊佐世保基地など、同作戦にかかわる主要部隊が多く存在する九州北部に所在していること
 ・V-22オスプレイの運用に必要な滑走路を有していること
 ・周辺に市街地がなく、海に面しているため、騒音などの面で地元住民の方々への負担を最小限に抑制しつつ十分な地積の確保が可能であること
 ・市街化が進んでいる陸上自衛隊目達原駐屯地からも近く、同駐屯地に配備されているヘリコプターの移設先として活用し得ること
となされています。
 そして、その後も、平成26年8月に小野寺防衛大臣、同年10月に左藤防衛副大臣が相次いで来県されて、古川前知事に対して同様の要請があったところです。
 そうした状況の中で、私は平成27年1月14日に佐賀県知事に就任いたしました。
 この防衛省からの要請に対しては、無色透明の意味で白紙という姿勢で向き合うことといたしました。そして、翌月の2月13日に左藤防衛副大臣から防衛省の計画内容について説明を受けた際に、不明瞭な点が多かったために、今回の要請は国防・安全保障に関することではあるものの、大切な県民の安全・安心に関わる重要な課題であるとの認識から、まず、防衛省に対し、米海兵隊の佐賀空港利用を含めて計画の全体像・将来像を明確にすることを求めました。
 その後、平成27年10月29日、この求めに応じて、中谷防衛大臣が来県され、改めて計画について説明がありました。
 その際、中谷防衛大臣から私に対し、アメリカの海兵隊の利用については、自衛隊機の配備、移駐とは切り離して要請を取り下げさせていただきますとの発言がありました。
 米海兵隊の佐賀空港利用については、米軍が常駐することへの不安について、私自身、県民から様々な場面でお聞きしていたところであり、中谷防衛大臣が明確に米海兵隊の佐賀空港利用の要請を取り下げられたことは、大きな変更だったと思います。これにより防衛省からの要請は、自衛隊の佐賀空港使用の要請のみとなりました。
 そして、平成27年10月以降、佐賀県は防衛省の説明内容について精査・確認作業を行いました。具体的には、同年12月から平成29年5月に九州防衛局からの回答を受理するまでの間、県と九州防衛局との間で合計5往復にわたり質問、回答のやり取りを行いました。
 その間、平成28年6月3日には、若宮防衛副大臣が来県し、新たに整備される施設、駐屯地の具体的な場所、そして施設の配置計画案が示されるとともに、同年11月8日には地元や県議会からの声を受けて私から当時の稲田防衛大臣に対して要請したオスプレイによるデモフライトが実施されて、実際にその音を体感する機会がつくられました。
 このような取組を通じて、当初明らかにされていない点が多かった防衛省の計画の全体像・将来像が概ね明確になったと考えられたことから、今回の要請について具体的に検討を進めていくこととなりました。
 そして、まず県と九州防衛局との間での合計5往復にわたる質問・回答のやり取り、県議会などにおける議論、意見、防衛省の説明などを踏まえて、県民の安全・安心の観点を中心に、環境への影響や漁業、農業への影響、民間空港としての佐賀空港への影響などに関する20の論点の洗い出し、論点ごとに県の確認、検討状況を整理した「佐賀空港の自衛隊使用要請に関する論点整理素案」を平成29年5月30日に公表しました。
 具体的には、県として評価する立場にないもの、低周波音による生活環境への影響など基準値や評価方法あるいは科学的知見などがないために評価できなかった点がありますが、そうしたものを除いた16の論点については、防衛省がこれまでの説明の中で示した適切な対策等を確実に講じることを前提として、不合理な点がないことなどが確認できました。
 その上で、国の対応についても次のとおり指摘しました。
 ・有明海漁協は、県が締結している公害防止協定の相手方であること、また、川副地区4支所に所属する漁業者は、防衛省が新たに駐屯地整備を考えている土地の地権者であることを踏まえれば、有明海漁協の漁業者のご理解が得られなければ、防衛省の要請を実現することは困難と考えること
 ・有明海漁協の漁業者は、国の公共事業に対する強い不信感を持たれており、今回の要請も諫早湾干拓事業などと同じ国の事業として捉えられていること
 ・今回の要請が有明海全体に関わる問題という視点に立って、有明海漁協の漁業者の皆さんが持たれている不信感の払拭と信頼関係の構築のために、安全対策や補償措置の確約、有明海の再生や水産振興のための新たな施策の展開など、あらゆる手段を講ずる必要があること
であります。
 一方、佐賀県議会においても様々な議論が交わされました。平成27年度からは、集中的に審議をする特別委員会が設置され、参考人招致を幾度となく行われるなど、審議が重ねられました。
 そして、平成29年6月定例県議会最終日の7月3日に「佐賀空港の陸上自衛隊配備に関する決議」が可決され、県民の代表である県議会として、安全対策や補償措置、有明海再生や水産振興のために必要な施策を講じつつ、今回の防衛省の計画を受け入れるべきと判断せざるを得ないとの意思を明確に示されました。
 そして、論点整理素案等で指摘した国の対応についての県の考え、及び県議会の決議を踏まえまして、県としては、漁業者の国に対する不信感が少しでも払拭され、信頼関係が構築されるように、
 ・有明海の環境保全の補償に関する枠組みの構築
 ・有明海再生や漁業振興のための施策
について防衛省との協議を開始いたしました。
 これは、県と有明海漁協の西部地区、中部地区、東部地区、大浦支所、そして南川副支所との意見交換会や、様々な機会にいただきました漁業者の皆さんの忌憚のない意見や率直な思いを国に伝えて、それをできる限り具体化していくという交渉でございました。
 そのような中で、昨年9月に沖縄での事故の調査報告書が公表され、また、8月にオーストラリアで、9月にはシリアでオスプレイの重大事故が発生したために、防衛省に対し、オスプレイの安全性について改めて確認、検証を行い、その結果を県に説明するように求めました。
 その後、本年2月5日には、本県の神埼市で目達原駐屯地所属のAH64Dの墜落事故が発生し、県も防衛省も、徹底した事故原因の究明と再発防止に全力で取り組むことが喫緊の課題という認識で一致したところから、こうした協議が一時中断することになりました。
 そして、7月23日に、小野寺防衛大臣が来県され、AH64Dの墜落事故に関して、
 ・被害に遭われた方々には誠心誠意対応していること
 ・AH64Dの約1万点に及ぶ多数の部品の中から事故原因を一つの部品(ストラップパックのボルト)絞るなど、一定の方向性が明確になったこと
 ・再発防止策を確立の上に、確実に対策が実施されるまではAH64Dアパッチを飛行させないことはもちろん、それまでの間は、AH64Dの佐賀空港への移駐も行わないこと
との説明があり、佐賀県としても、一定の説明がなされたものと受けとめたところです。
 同時に、オスプレイの機体の安全性及び安全対策の方向性について説明がありました。その中で、小野寺防衛大臣は、有明海及び佐賀県上空では過酷な状況下における訓練は実施しないことを明言されました。さらに、安全性に関する情報共有について、県と防衛省が双方で連絡を密にするルール化についての私の提案に対し、良いことであっても、悪いことであっても包み隠さず報告することが信頼を積み上げていく上で大切であるとの思いから、安全性に関する情報共有等のルールを作っていくことを約束されました。
 県はオスプレイの機体の安全性及び安全対策の方向性に関する説明について精査・確認を行い、8月8日に、防衛省の説明に不合理な点はないことを確認したことから、
 ・有明海の環境保全と補償に関する枠組みの構築
 ・有明海再生や漁業振興のための施策
について、防衛省との交渉・協議を再開したところです。
 その結果として協議が調い、本日、佐賀県及び防衛省それぞれの責任者である私と小野寺防衛大臣との間で、その内容について最終的な確認を行うことができました。
 具体的には、今回の防衛省からの要請が佐賀空港の民間空港としての使用・発展に影響を及ぼさないことを前提に、3点について確認を行いました。
 ・1点目は、環境保全と補償に関する協議等を行うための「協議会」を設置すること
 ・2点目は、防衛省が着陸料として100億円を支払い、県はそれを財源として、有明海漁業の振興と補償のための基金を創設すること
 ・3点目は、県と防衛省間にホットラインを設置すること、定期的な連絡会の開催など、オスプレイの安全性に関する情報共有のルールを構築すること
であります。
 さらに小野寺防衛大臣は、コノシロ漁への自衛隊機の騒音の影響に関して、
 ・より客観性を高めた形での追加的な騒音影響調査の早期実施
 ・調査結果を確認の上、例えば、飛行経路や飛行時間帯の制限など、取り得る対策の実施
について明言されました。私は、大臣の発言を重く受けとめるとともに、漁業者の納得が得られるような対応をしていただくよう申し入れました。
 最後に、小野寺防衛大臣は、何よりも安全が大切であり、佐賀空港を使用する自衛隊機については万全の安全対策を講じることを約束されました。
 以上申し上げましたとおり、私は、今回の防衛省からの要請につきましては、結論ありきではなく、状況を見ながら様々な意見を聞き、幅広い観点から検討するという、プロセスを大切にし、実直なやり方で向き合ってまいりました。
 その考え方の概略を3点申し上げたいと思います。
 1点目は、今回の防衛省からの要請は、国の根幹に関わる、我が国の独立と平和を守る国防・安全保障に関することであることから、国を構成する地方公共団体である佐賀県としては、国防政策には基本的に協力する立場であると考えており、本県としても一定の負担をする必要があると考えていることです。
 2点目は、計画の全体像・将来像について明確にすべきとの本県からの要請に対し、米海兵隊の佐賀空港利用要請が取り下げられ、施設配置計画案や環境等への影響とその対策、オスプレイの機体の安全性など多岐にわたる項目について質問・回答のやり取りを重ねながら防衛省の説明について精査・確認した結果、不合理な点はないことが確認できました。
 3点目は、県と防衛省との間で佐賀空港の民間空港としての使用・発展に影響を及ぼさないことを前提に、環境保全と補償に関する協議会の設置、防衛省が支払う100億円を財源とした基金の創設、安全性に関する情報共有のルールの構築について、本日、合意できたことです。
 このように、これまで様々な点について総合的に検討し熟慮に熟慮を重ねた結果、県としては、「今回の防衛省からの要請を受け入れ、公害防止協定覚書付属資料の変更について有明海漁協と協議をさせていただく」という判断をさせていただきました。
 今から28年前、県と有明海漁協との間で、覚書付属資料に「県は佐賀空港を自衛隊と共用するような考えを持っていない」との記載がある公害防止協定を締結しました。当時の県の考え方がそうであったことは事実であり、今回の防衛省からの要請を受けるまでは、県が主体的に自ら佐賀空港の自衛隊との供用を考えたことはございませんでした。
 ただし、今回の防衛省からの要請は、国の根幹に関わる国土・国民を守る国防・安定保障に関することであり、正面から、そして真摯に向き合うとともに、県民の安全・安心にかかわる重要な課題でもあることから、様々な観点から丁寧かつ慎重に検討を重ねてまいったところであります。
 本日、要請を受け入れるという判断をいたしましたが、私は佐賀県を預かる知事として、県民の安全・安心を何よりも大切にしながら、今後とも取り組んでいくことを改めて県民の皆様方に申し上げたいと思います。
 私からは以上です。





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