(知事の発言内容は以下のとおりです)
皆さま、こんにちは。日本国佐賀県知事の山口祥義です。
グロッシー事務局長には、本セッションにて発言の機会を与えていただき、心から感謝申し上げます。
日本の佐賀の地から、稼働中の原子力発電所を持つ県の知事として、私の考えを述べさせていただきます。
私は、佐賀県知事に就任する前は、政府機関に所属して、災害現場の最前線を指揮する立場として、日本全国の危機管理に関わってまいりました。
その一例ですけれども、1999年には、茨城県東海村でウラン加工工場における臨界事故が起きたのです。その発生当日に現地対策本部に入って、臨界反応を停止させるオペレーションですとか、周辺住民の避難計画の策定を指揮しました。実は、当時は、具体的な避難計画もありませんでした。
2015年に佐賀県知事に就任した後は、豪雨災害だったり、新型コロナや鳥インフルエンザなど、直面する様々な危機に立ち向かってきました。
こうした経験から、私が痛感しておりますのは「危機管理は何よりも現場が大事で、現場に合わせたオペレーションが大切である」ということです。
原子力発電は、何よりも安全が最優先です。
2011年、日本では東京電力福島第一原子力発電所で事故が起こりました。
「福島原発の事故を忘れてはいけない。風化させてはならない。二度とあのような事故を起こさない」
原子力発電に関わる全ての人は、強い気持ちで、常に緊張感をもって取り組んでいかなければならないと思います。
私は、再生可能エネルギーを中心とした社会、これが実現できれば素晴らしいな、と思っております。
しかし、現時点において、一定程度、原子力発電に頼らざるを得ない状況です。
そして、私は、電力を大量に消費している地域の方々に、もっと自分事としてエネルギー問題を考えていただきたいと強く思っています。
さて、現在、佐賀県にある原子力発電所には原子炉が4基ありますが、2基が廃止措置中、2基が通常運転をしております。
この廃止措置を行うにも、数十年の長い時間が必要です。
原子力発電所の立地県として、安全を担保していくためにも運転管理や廃止措置に必要な人材を十分に確保し、技術や知見が確実に継承されるという観点から、原発を稼働していくことは大切と思っております。
原子力事業者は、小さなトラブルであっても速やかに公表し、住民に分かりやすく説明することが必要です。
特に、原子力事業者に対しては、私は知事に就任した直後から「3つの約束」を求めてきました。とても分かりやすいです。
1つ「嘘をつかない」こと、
1つ「風通しの良い組織を作る」こと、
1つ「あらゆる危機事象に対応できる体制を作る」ことであります。
この、とても基本的な「3つの約束」を繰り返し、繰り返し事業者に伝えています。
事業者がトラブルを未然に防ごうと準備し、現場が高い危機意識を持っていても、ヒューマンエラー、これはどうしても起こるものです。
国や事業者に対しては、ミスや事故が起きることを前提に備えるように求めておりまして、我々としても、さまざまな防災計画、避難計画で毎年訓練を実施しております。
訓練では、国や関係自治体、民間業者や自衛隊などの実働機関と緊密に連携しながら、自然災害との同時発災をも想定し、ヘリを使って離島住民を避難させるなど、効果的な訓練を実施しております。
今後も、現場に合わせた効果的なオペレーションができるように、引き続き、実践的な体制づくりに取り組んでいきたいと思っています。
私たちは、ふるさとである佐賀を愛しています。この自然豊かな美しい地域を守るため、住民の安全を何よりも大切に、原子力発電所と真摯に向き合っております。
さて、ここで、この機会を利用して、ちょっと佐賀県の紹介をさせてください。
佐賀県は、日本列島の西にあります九州エリアの北部に位置します。最高品質を誇る佐賀牛、そして世界最高峰の審査会であるインターナショナル・ワイン・チャレンジで最優秀賞となった日本酒、様々な豊かな「食」が世界中の人々を魅了し続けております。
それから、400年前からヨーロッパの王侯貴族を魅了してきた有田焼・伊万里焼は素晴らしいです。そしてユネスコの無形文化遺産であります勇壮な祭り「唐津くんち」などなど、世界に誇る「本物」の地域資源はさらに輝きをましております。こうした自然と歴史・文化が調和したすばらしい地域でありますので、皆さんの御来訪をお待ちしております。
さて、最後にIAEAにおかれましては、チョルノービリやスリーマイルの原子力発電所事故、更に福島原発事故を風化させることなく、更なる安全規制の厳格化とその実効性の向上に取り組んでいただきますようにお願いします。
そして、この会議が実り多いものとなるよう心から願っております。