佐賀県窯業技術センター |

世界最強強度の磁器!?
新しい素材や技術で、
焼き物の歴史をつなぐ
研究企画部 部長蒲地伸明さん
蒲地伸明 さん

◆どのような施設ですか?

陶磁器やセラミックスに特化した技術拠点、それが佐賀県窯業技術センターです。施設の歴史は古く、1928年に佐賀県窯業試験場として発足しました。焼き物の技術支援や研究開発に取り組み、県内の窯元やセラミックスメーカー、商社などをサポートしています。最も依頼が多いのは技術支援。たとえば「焼くときに割れてしまう」「色が黒ずんでしまう」などのトラブルがあったとき、私たちがその原因を調べて、どうすれば改善できるかアドバイスしています。また研究開発も私たちの大きな役割で、先端材料である固体電池から伝統的な陶磁器まで幅広い分野に取り組んでいます。その成果のひとつが世界最強磁器です。

◆世界最強磁器とは?

窯業技術センターは30年以上強化磁器の開発を行っており、2005年には、従来の4倍ほどの強度の強化磁器を開発し特許を取得しました。そして2016年、従来の5倍(強化磁器の1.5倍)強い磁器を開発。世界最強磁器となり、改めて特許を取得しました。世界最強磁器とは具体的にいうと「世界最高の曲げ強度を持つ素材」です。曲げ強度とは、材料の強さを表す尺度として一般的に用いられる指標。棒状にした陶磁器(試料)を下から2点で支えて横向きに設置し、上から荷重を加えて試料が破壊した時の荷重の値をもとに算出されます。私たちが開発した世界最強磁器はこの強度が従来の5倍あり、飛躍的に割れにくい磁器を開発することができました。この技術によって、従来よりも軽くて薄い、デザイン性の高い製品を作ることができるようになりました。

◆世界最強磁器とは?

◆どのように磁器を強化するのでしょう?

磁器材料の構造は主に骨材となる粒子と、骨材の隙間を埋めるガラス相でできています。従来の強化磁器材料(2005年開発)では、骨材の周囲のガラス相の中に気孔が残っており高強度化の妨げとなっていました。世界最強磁器材料では、焼成時のガラス相の特性を改良することで、ガラス相中の気孔を小さくすると同時に減少させることにも成功。それにより、これまでにない高い強度を実現しました。世界最強磁器は現在、学校給食の食器などに使用されています。それまで給食はプラスチック製の食器が多かったのですが「プラスチック削減」などの時代の流れから、磁器の食器が見直されつつあります。強化磁器の食器は長く使えることが最大のメリットで、その分ランニングコストも抑えることができます。

◆どのように磁器を強化するのでしょう?

◆その他の研究も教えてください

磁器の成形に使う石こう型はこれまで職人の方が手作業で削り製作されていました。最新技術(3D-CADやNC切削機)を用いた石こう型製作技術を開発したことで、手作業では難しかった複雑な形状の陶磁器を製作できるようになりました。窯業界でこの技術を用いたのは、窯業技術センターが初めてです。これによりミクロン単位の精度が求められる加工が可能となり、これまでにない緻密なデザインの製品も生まれています。セイコーの高級機械式腕時計(有田焼ダイヤルモデル)にも、窯業技術センターの技術が利用されています。ダイヤル(文字盤)に有田焼が使用されているもので、メーカーの厳しい強度基準をクリアするために世界最強磁器が採用されました。またNC切削機を使用することで、ダイヤルに精密な加工を施しています。この腕時計は多くのお客さまに好評をいただいており、私たちも大変喜んでいます。

◆その他の研究も教えてください

◆県民のみなさんにメッセージ

佐賀県窯業技術センターでは研修や講演会なども随時行っています。陶磁器の世界で働きたい方はもちろん、現在業界で働かれている方がスキルアップのために利用されたり、販売員さんが「焼き物の知識を得たいから」という理由で参加されたりすることもあります。興味がある方は、研修にもぜひ参加してみてください。私たちはこれからも地域に開かれた伝統と想像の技術拠点として研究開発、技術支援、事業化支援、人材育成などに取り組み、県内窯業界の発展と振興をサポートしていきます。

佐賀県窯業技術センター

〒844-0022
佐賀県西松浦郡有田町黒牟田丙3037-7 
TEL : 0955-43-2185 
FAX : 0955-41-1003