佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター |

サガンスギは早く成長して、しかも強いのはなぜ!?
「目に見えない部分」
の課題に光を当てる
ビームライングループ
副主任研究員馬込 栄輔さん
馬込 栄輔 さん

◆どのような施設ですか?

佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターは、2006年に設立された研究機関です。シンクロトロン光とは基本的にはレントゲン撮影で用いられるX線と同じもので、センターでは物質を原子や分子のレベルで観察するためにこれを使います。同様の研究機関は日本に9カ所ありますが、九州ではここが唯一の施設です。これまでわからなかった「目に見えない部分」を解明し、企業や大学の課題解決につなげる、それが九州シンクロトロン光研究センターです。

◆どのようなものを解析されていますか?

例えば半導体材料です。近年スマホや自動車などに半導体は欠かせないものとなっていますが、シンクロトロン光を使うことで、電車や自動車の動力制御に使う新しい半導体材料の良否(原子がきれいに揃っているかどうか)を調べることができます。また、触媒と呼ばれる材料の研究も行っています。触媒は、例えば燃料電池(水素と空気中の酸素とを反応させ水にすることで電気を取り出す)の中で、取り込む気体を制御するために使われています。さらに佐賀県が生んだ次世代スギ「サガンスギ」の解析のように、工業分野以外の研究にも使用されています。

◆どのようなものを解析されていますか?

◆サガンスギの解析について教えてください

サガンスギには「成長が早い」「木材の強度が高い」「花粉が少ない」などの特徴があります。これまでは成長が早いと年輪の幅が大きくなるため、強度が低い(弱い)というのが木材の常識でした。しかし佐賀県林業試験場で長年かかって開発されたサガンスギは、その常識をくつがえして強度が高い。それはなぜか?ということをシンクロトロン光を使って調べました。具体的にいうと、木材強度と密接な関係があると言われているミクロフィブリル(細胞壁を作り上げているセルロース繊維)の構造を明らかにする研究です。

◆サガンスギの解析について教えてください

◆その研究で何が判明したのでしょう?

木材の細胞壁を構成するミクロフィブリルの傾斜角度が小さいほど、曲げヤング係数(木材の強さを示す指標の一つ)が大きい、つまり木材強度が高いといわれています。今回のシンクロトロン光を使った実験の結果、従来のスギと比較したとき、サガンスギのミクロフィブリルの傾斜角度が従来のスギより小さいということが判明しました。(傾斜角:従来スギ33度、サガンスギ18度)この結果により、林業試験場が行った物理的な試験で得た木材強度の違いを「木材の細胞壁の構造」というミクロな視点から証明できました。サガンスギの強さは遺伝することも林業試験場での研究で判っていますが、この細胞壁の特徴も遺伝しているのではないかと考えられます。

◆その研究で何が判明したのでしょう?

◆県民のみなさんにメッセージ

半導体材料やサガンスギのほかにも、シンクロトロン光はさまざまな分野の研究・解析において利用されています。花(スプレー菊)の種や成長点にシンクロトロン光を照射して突然変異を意図的に生み、新しい品種の開発や育成を行ったり、熱処理で有田焼の色が変化する謎を研究したり、食品分野(神埼そうめんの食感)の研究なども行っています。
県内企業のみなさんの中には「シンクロトロン光って何?」「どんなことに利用できるの?」と思われている方も多いのではないでしょうか。でも、もしかしたらシンクロトロン光により、今みなさんが抱えている課題を解決できるかもしれません。九州シンクロトロン光研究センターには、企業のみなさんの課題をお聞きして、どのような研究・解析で解決できるのかをサポートする「産業利用コーディネーター」も常駐しています。ぜひ一度みなさんの話を聞かせてください。私たちは県内企業のみなさんに貢献したいという想いがあります。だからこそシンクロトロン光をもっと多くの人に知っていただき、ぜひ活用していただきたいです。

佐賀県窯業技術センター

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