


◆どのような施設ですか?
佐賀県工業技術センターでは、県内企業のニーズに応じて技術相談や研究開発などを行っています。センター内に「食品コスメ部」「材料環境部」「生産技術部」があり、研究分野もさまざま。一例ですが金属加工分野において、材料環境部ではステンレス鋼の削り方を工夫することで表面を硬く、壊れにくくする研究を行っています。実現すれば特別な処理を施さなくても、丈夫で長持ちするステンレス製品をつくることができます。
生産技術部ではAIやIoTなどの技術を使い「加工工具が壊れる前に予知する研究」を行っています。熟練の加工技師は長年の経験から音や振動などで工具の劣化や破損を判断できますが、センサとAIを活用することで(経験が浅い技師でも)工具の劣化と交換のタイミングがわかるようになります。また、生産技術部の中の「諸富デザインセンター」では、デザイン(意匠)をはじめとする家具製品の開発支援も行っています。
◆食品コスメ部の研究内容を教えてください
私が所属している食品コスメ部では、醸造業界や食品・コスメ業界の商品開発や研究開発の支援を行っています。コスメ分野では、アスパラガスやレンコンの廃棄される部分を機能性化粧品の原料にする研究などを行っています。そして私が担当しているのは、佐賀県産日本酒のブランド力向上や品質向上のサポート。そのために醸造微生物(麹菌、酵母、乳酸菌)の開発をはじめ、香りや味の成分分析や原料米の特性解析などを行っています。お酒造りに使用する酵母によって、お酒の味や香りが違うため「冷やして飲んだほうが美味しい」とか「温めたほうが美味しい」のような商品設計に応じたアドバイスをすることもあります。

◆パイナップルの香りがする日本酒とは?
佐賀県では、これまで6株の酵母(F4株、F7株、F401株、SAWA-1株、SGH32株、StyP株)を生み出しており、これらを「佐賀はがくれ酵母」として商標登録しました。佐賀はがくれ酵母は年々、培養液の提供量も増加しており、現在は県内のほとんどの酒蔵が使用しています。新しい酵母の研究は他県でも行っているのですが、工業技術センターは2~3年に1つのペース(他県の2倍以上の開発速度)で新酵母を生み出しています。
そんな佐賀はがくれ酵母の中で、最近話題になったのは「StyP株(Saga type
Pineapple株)」という酵母です。「StyP株」は県産のイチゴ「さがほのか」から分離した酵母と「SAWA-1株」を交配させてつくった約6000株の酵母の中から、酒造適性が高くて香味に特徴のある1株を選抜したものです。昨年「StyP株」を使用した日本酒が県内酒蔵より発売され、パイナップルのような香りがすると大変好評を得ています。佐賀県がつくったパイナップルの香りのする日本酒、大人のみなさんは是非味わってみてください。





◆県民のみなさんにメッセージ
この仕事のやりがいは、自分の研究成果をたくさんの人に喜んでもらえることです。私の祖母は「はたらく」というのは「はた(そばにいる人)」を「らく」にすることだよと言っていました。県内の酒蔵が抱える問題を解決し、酒造りに携わっているみなさんの心が楽になればと思いながら私は研究に取り組み、はたらいています。そして私と同じように、ここで働いている研究員はみんな「県内企業のみなさんと一緒に課題解決や研究開発をしたい」と思っています。佐賀県工業技術センターは設備も整っており研究分野の幅も広いため、企業のみなさんが抱えている課題があれば、それを解決できる糸口がきっと見つかるはずです。今までご利用になったことのない県内企業のみなさん、ぜひ気軽にご相談ください。