小城市学校支援・振興プロジェクト第4回プロジェクト会議(3月6日)が開催されました
小城市では、学校支援・振興プロジェクトの取組として芦刈小学校、芦刈中学校において、「地域の活力を生かした幼小中一貫教育の研究」のテーマの下、コミュニティ部会、教育課程部会を組織し、地域と学校の連携、小・中学校の一貫教育の在り方などについて研究を進められています。
今回は、佐賀大学文化教育学部の井上正允(まさちか)教授をお招きし、「9年間をつなぐ小中一貫教育の在り方」についてご講演いただきました。
会議の概要
1 日時 平成21年3月6日(金曜日)15時30分から17時00分
2 場所 芦刈公民館
3 出席者 PTA代表、地元有識者、芦刈小学校及び芦刈中学校教職員、小城市教育委員会職員、県教育委員会職員
4 内容 ・小城市教育委員会教育長あいさつ
・講演
演題「9年間をつなぐ小中一貫教育の在り方」
講師:佐賀大学文化教育学部 教授 井上正允(まさちか) 先生
講演の概要
1 はじめに
佐賀に来て4年が過ぎようとしているが、それぞれの地域には地域の良さがあると同時に、地域特有の課題もあると感じている。都会の教育をスタンダードとするのではなく、地域の特性や課題をしっかりと見つめ、地域ならではの学校教育を創ることが大切だと思う。佐賀では、人と人とを結びつける「結(ゆい)」が健在であると感じるし、豊かな自然などにも恵まれていると思う。これを前面に押し出しながら教育の在り方を考えてはどうかと思う。
また、昨年度、全国学力・学習状況調査の検証改善委員会に関わってみて、平均点などの高い、低いではなく、さらに深く分析し子どもたちの実態・課題に応じた対策を焦点化し、そこに重点的に取り組むことの必要性を改めて感じた。
2 小学校と中学校の「学校文化」の差異
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私自身は、小、中学校の滑らかな接続はあり得ないのではないかと考えている。子どもの発達段階を考えたとき、中学校は厄介な時期だと思う。失敗を重ねながら自分を作っていく時期でもあり、それまでとは違った課題に直面することになる。
- 教科指導について小、中学校の教員で連携するとすれば、各教科の内容について議論するということである。算数、数学を例にとれば、小学5年生で三角形の内角の和が180度になることを使って、四角形や五角形の内角の和を求める学習を行い、同じ内容を中学2年生でも学習するが、その際、その学習のねらいとすることが明確でないまま、授業が行われていることがある。何が違うのか、どう発展しているのかについて、小、中学校の教員が議論し、指導の在り方について検討すべきである。単に、教科書に書かれていることを丁寧に解説し、練習問題に取り組ませるだけでは、真に必要な知識や技能、考え方は身につかない。
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中学生になり、不登校や問題行動の発生率が上がるなど、いわゆる「中1ギャップ」の課題が指摘されるが、程度の差こそあれ佐賀県も例外ではない。また、理数嫌いなどが指摘されるが、算数、数学に関して言えば、教科の好き嫌いを調査した結果を見ると、小学4年生では2番目に好きな教科だったものが5年生、中学1年生のときに急激に下がるという結果が出ている。
- 高校では文系や理系というクラス編成が行われることがあるが、一部では中学校でもそのような分け方がされるところもあるようである。しかし、中学校の段階でそのようなことを決めるのは難しいのではないかと思っている。特定の教科の得点が高い、低いということだけで決めているようであり、この時期に適切な判断ができるのか疑問である。
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「学校適応」に関して調査された研究によると、小学6年後半と中学校入学後の変化を追うと、「学習意欲」の面では、中学校入学後に一旦上昇するもののその後下がる、「対教師関係」と「級友関係」では下がり続けるという傾向が出ている。また、「学校適応度」の高い群と低い群に分けて比較すると中学1年から中学2年にかけて、その差が大きく開いていく2極化の進行も見られる。これは、各中学校における実情と重なる部分が大きいのではないだろうか。クラス経営を考える際のポイントになるし、中学校の教員ばかりでなく、小、中学校の教員が同じテーブルで議論し合う必要がある。小学校の教員は、卒業生のその後の状況を追跡していく必要があると思う。
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教育学者の竹内常一氏が青年期を「自分くずしと自分つくり」という言葉をつかって説いているが、この時期の特徴を的確にとらえ対応していくことが今の中学校に求められているのではないか。
3 義務教育9年間を見通して
- 小学校の算数は有用性が自覚されやすいが、中学校の数学に対して有用性を感じているものは少ないといわれる。高校の入試の関係もあると思うが、問題の解法パターンを覚え、答えが合えばよいという考えが先に立ち、その問題が意図しているところ、問題の意味といったものを理解しないままになっているところがある。このような暗記や機械的な学習ばかり繰り返していては、有用性は分からないであろう。数学で何かを証明することの面白さ、自分の頭で考え試行錯誤し、理解できた喜びといったものを感じさせられる学びであって欲しい。
- 佐賀大学附属小学校で、小中連携の授業研究会を行った。5年生の算数では、「確率」に関する授業を小学校の教員と中学校の教員のティームティーチングで行った。ある事象が起こる確率を実際に自分たちで実験しながら求めていく活動とそれが数学という世界にどう結びついているのかを知る授業だったが、それぞれの教員の持ち味が生かせていたのではないかと思っている。
- 教員は子どもたちが食いつくような授業、「なぜ? どうして?」という興味・関心を持ち、解いてみたいと思わせるような課題を仕組むべきである。生活の経験や知識をどのように教科に結びつけるのか、また、学んだものがどのように発展し、深められていくのかを理解すること、ここも小、中学校の教員が連携して取り組んで欲しいところである。
4 これからの教育課題
- 各種の調査などで、例えば「家庭学習の時間が少ない」という結果などが出ると、家庭学習ノートを持たせて意識付けをするなどの対策を講じがちだが、ある課題が出てくるたびにそれぞればらばらに対策をとっていくというやり方では全体を見失うことになったりする。部分部分をつなぎ合わせても、決して全体にはならない。全体は単純な部分の総和ではない。その背景などをよく分析して、課題をしっかりと設定して継続して取り組むことが重要である。
- また、基礎・基本と応用・発展といった二分法の議論がなされるが、双方向の関係にあると捉えるべきである。野球を例に取れば、基本的な素振りも大事だが、試合をしてみることが楽しさを感じたり、自分の力を知ったりする機会となり、基本である素振りにこれまで以上に意欲的に取り組むようにもなるということである。応用・発展から基礎に下りる学びというものもあると思う。
講演会に参加して(担当者から)
小中連携や小中一貫教育が注目をされていますが、今回はハード面というよりも教員が子どもたちの発達段階や学習内容をしっかりと捉え、内容面での連続性をどのように確保していくかが重要であるという示唆をいただいたように感じました。
佐賀大学附属中学校の校長も務められながら、実際に県内の小学校や中学校で提案授業をされるなど、フットワークも軽く実践経験豊富な井上先生の話は、自分自身の取組を振り返り、反省する大変貴重な機会となりました。
お問い合わせ先
佐賀県教育庁 教育政策課
メールアドレス: kyouikuseisaku@pref.saga.lg.jp
