神埼市教育委員会・神埼プラン運営委員会主催の教育講演会(1月5日)が開催されました
神埼市教育委員会と神埼プラン運営委員会(学校支援・振興プロジェクト事業の神埼市での運営組織)の主催による教育講演会が、1月5日(月曜日)、千代田文化会館(はんぎーホール)で開催されました。
講師に、早稲田大学大学院教授であり中央教育審議会委員を務めておられる安彦忠彦先生をお招きし、「新学習指導要領の趣旨と今後の授業像」についてご講演いただきました。
当日は神埼市内の教職員を中心に、市外からも参加者があり、新しい学習指導要領の趣旨や確かな学力として求められているもの、そしてその力を子どもたちに身に付けさせていくための授業の在り方などの講演に熱心に耳を傾けられていました。
以下、御本人の了解をいただきましたので、講演の主な内容について紹介します。
講演の概要
演題 「新学習指導要領の趣旨と今後の授業像」
講師 早稲田大学大学院 教授 安彦 忠彦 先生
はじめに
学習指導要領改定の背景について、「日本の歴史的位置の変化」と「日本社会の教育力の衰退」、「日本の学校教育の国際比較上の変化」の3つの視点から説明がありました。
- 日本が先進諸国に追いついたことは、モデルとなるものがなくなったことでもあり、モデルを模倣するだけでは通用しないときに来たことを意味している。これからは模倣のために記憶するだけでなく、先進国と同様に決める力や考える力など「思考力」が重視される。
- 社会全体の取組による教育の回復・再生の声が上げられているが、子どもの側から日本社会の教育力を見てみることが大切である。親、地域、学校にはそれぞれにそれぞれの役割があるのであって、学校が何もかも役割を担う社会では子どもは幸せを感じないと思う。
- 「生きる力」として出された学力観は国際標準となっているOECD/PISAの学力観と近似したものである。中教審答申にも引用されているが、OECD/PISAで求められるキーコンピテンシー(主要能力)は感性や感情、意志といった心理的なリソース(材料)、人間関係、友人関係などの社会的なリソースを活用して実社会や実生活において複雑な課題に対応することができる力とされている。
新学習指導要領の趣旨
新学習指導要領の改訂の方向性として中教審で議論されたこと、基本的な考え方などについて、以下の柱に沿って説明がありました。
- 改正教育基本法を踏まえた学習指導要領の改訂
- 「生きる力」という理念の共有
- 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- 思考力・判断力・表現力等の育成
- 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
- 学習意欲の向上や学習習慣の確立
- 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
主な内容についてご紹介します。
- 改正教育基本法の制定に伴う学校教育基本法の改正により、義務教育の目標が明記された(学校教育法第21条)。義務教育の9年間を通して身につけさせることが目標として掲げられており、これをもとに小学校6年間、中学校3年間という区切りを固定的に捉えず、9年間のスパンを柔軟に区切った研究などが進められているところもある。
- 「基礎的・基本的な知識・技能」と「思考力」については、どちらを重視するかということではなく、どちらも必要なものとして「二兎を追う」ことが必要である。そのためにどういう工夫をするかを考えていくべきであり、この2つを結びつけることが大切である。
- そのために導入される活用型学習については、それが進められることが最終的な目的ではなく、思考力・判断力・表現力等を育成することにつなげることが目標である。各教科の中で、それぞれの教科の知識・技能を活用し、観察、実験、論述などに取り組んでいくものであり、すべての子どもに取り組ませていくものである。
- 「学力の育成」については、先生方が責任を持つ、それを取り巻く「豊かな心の育成」については学校固有のものとしてではなく、社会全体で取り組むことと捉え、連携しながら取り組むという役割をきちんとしていくことが大切である。
新学習指導要領のめざす今後の授業像
主に、中教審答申の内容上の「主な改善事項」が学習指導要領の授業像にどう具体化されていくのか、以下の7点について説明がありました。
- 言語活動の充実
- 理数教育の充実
- 伝統や文化に関する教育の充実
- 道徳教育の充実
- 体験活動の充実
- 小学校段階における外国語活動
- 社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項
主な内容についてご紹介します。
- 「言語活動の充実」が、国・数・英の時数増、各教科等での言語活動の重視、コミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動重視といったことに具体化されていく。
- 「理数教育の充実」が国際的な通用性、内容の系統性、小中の円滑な接続を踏まえた内容の充実、実生活に結びついた学習といったことに具体化されていく。
- これらの中で「道徳教育の充実」は改正教育基本法で重視されているものでもあるが、発達段階に応じた内容や体験活動、先人の生き方・自然・芸術・伝統と文化・スポーツなどの感動的な教材、社会人との協働といったことが具体化されている。中でも社会人との協働(コラボレーション)については、これから特に強化して取り組むことが求められる。
おわりに
まとめとして、以下のようなお話がありました。
- 「認め合い、高め合い、磨き合う集団づくり」による「活用型」学習の確立が鍵である。
集団性を学ぶ場が少なくなっている中で、特に個を生かす集団作りと縦のつながりを大事にしたい。
- 「社会全体による」学校教育の再生・復活を社会に向かって呼び掛け、学校に巻き込め!
教育条件の整備の声を現場からも上げるべきである。
質疑応答
- 活用型の学習が重視されている。各教科の中で、それぞれの教科の目的、内容に応じて実施するということだったが、授業時数が足りなくなるのではないかと感じている。その辺りは、どう考えればよいか。
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- モジュール学習(1単位時間をいくつかに分割)やいくつかの授業時間を組み合わせたブロック単位での学習をするなど、時間の使い方も工夫が必要である。例えば、休み時間の設定にしても、多くの学校では10分間とされているが、法的な根拠はなく、学校の工夫次第で効果的な時間の捻出ができるのではないだろうか。
- 今後の10年に向けての展望があれば、教えていただきたい・
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- 社会の変化、情勢との対応で考えていく必要があるが、先が見通せないなかでは、はっきり分からないというのが答えである。ただ、環境の問題は柱になっていくのかなと感じている。環境問題への対応、エネルギー問題への対応など世界共通で取り組まなければならなくなっている。また今の経済状況などを見ていると、自分たちの生活の仕方を考え直すよい時期であると思っている。これまでの能力開発型から能力制御型へ、「自分や能力を制御できる力」(足るを知る力)をつけていくことが求められる世の中になっていくのではないかと感じている。
講演会に参加して(担当者から)
新学習指導要領の趣旨について、それが求められている背景などていねいにお話いただき、大変勉強になりました。同時に、教育に携わるものの基本的な姿勢についても熱い口調で語っていただき、その重責を改めて感じるとともに、「やる気」を引き出していただいたように思います。
「子どもたちから見た教育の姿はどうなのか?」 この事は、大人や社会全体が真摯に受け止め、常に意識しておかなければならないことだと感じました。
お問い合わせ先
佐賀県教育庁 教育政策課
メールアドレス: kyouikuseisaku@pref.saga.lg.jp
