教育実践交流会(教育センター主催)において、学校支援・振興プロジェクトの中間発表を行いました。
佐賀県教育センター(佐賀市大和町)で、2月14日に開催された第9回「教育実践交流会」において、学校支援・振興プロジェクトの取組を紹介しました。
交流1では「学校支援・振興プロジェクトとこれからの教育行政」とのテーマで事業概要と各地区の取組内容の紹介、プロジェクトの取組を今後へどう生かしていくかなどを中心に発表しました。
交流2ではプロジェクトに取り組んでいる地区の実践発表として、多久市と神埼市の取組を紹介しました。
交流1「学校支援・振興プロジェクトとこれからの教育行政」
(県教育庁企画・経営グループ指導主事 松本成浩)
発表の概要
1 今日の教育をどうとらえるか
社会・経済構造の変化を背景に、学校・地域が抱える課題も複雑化、多様化している。
知識社会における学力観・教育観、家庭や地域との相互理解と協働といった政策面はもとより、画一的な教育行政システムの転換や、学校の今日的な価値の再構築など、教育を支える根本の部分が問われている。
2 今後の政策形成へむけた新しい取組
このような中、これまでのように専ら、国や県などが政策立案を行い、現場には「言われたとおり」にやってもらうということではなく、大学等の専門的な知見・人材や、保護者・地域など教育の外部からも知恵や協力をいただきながら、政策を立案・展開していくことが不可欠。
また、その結果として、教育現場の潜在的な力をいかに引き出していくかが問われている。
3 学校支援・振興プロジェクトについて
今回のプロジェクトは、教育行政に携わる県の職員が教育現場に直接出向き、現実の課題解決のために市町や学校、保護者、地域の方々などとチームを組んで取り組んでいく「現場志向」の取組。
県内8箇所で実施しており、各地区のテーマや解決へのアプローチも、現場からの提案に基づく様々なものだが、県からは、関係課・所の職員をテーマに応じて会議等へ派遣し、情報提供やアドバイスを行ったり、研修などの講師を務めるなどの支援を行っている。
これまでの取組の結果、学校の中と外や、教育行政と教育現場といった部分での「関係性の構築」や、地域ごとの課題に対する「共通理解」は得られてきたと考えている。
4 プロジェクトの成果を今後いかに・・・
各地区での解決策や知恵、アイデアなどは、その地区だけにとどめるのではなく、県のこれからの施策の立案や展開に反映させ、他地区にも広めていく。
また、この取組を通して、これまでの教育行政と教育現場の関係も再構成していく必要があると考えており、「現場志向の政策形成」を基本としつつ、お互いが当事者意識を持って関わっていく関係づくりが必要である。
各地区の協議会、研修会等に出席し、教師や保護者、地域の方々の思いや潜在的な力などをひしひしと感じており、教育行政としての現場の課題解決に「期待される存在」となれるよう、取り組んでいきたい。
質疑応答
Q 市町の小・中学校だけでなく、県立高校も対象としてはどうか。
A 「現場志向」という課題について、県立高校についても同様の側面はある。ただ、まずは問題が根深い方からとの意図で、「学校→市町教育委員会→教育事務所→県」といった重層的な関係にある小・中学校から取り組むこととした。
県立高校についても、例えばハイスクールプランニングなど各校の特色をいかすための支援は行われているが、例えば、昨今、「専門高校の活性化」などが課題となりつつあるので、この2年間の成果も踏まえながら、今後、検討していく。
Q 取組状況等をホームページでオープンにしているとのことだが、各地区の会議などを参考にしたいので出席したい場合、可能だろうか?
A こちらの方に御相談いただければ、各市町や学校とも相談して、可能な限り参加できるよう、調整したい。
Q 21年度以降についてはどのように考えているのか。例えば、自分の学校でもやりたいと思った場合、やってくれるのか。
A この事業をそのまま引き続きやるというよりも、事業の成果を踏まえ、例えば、「提案公募」や「職員が直接出向いていく」、「方法論などを市町に任せる」といった手法については、他の事業にも活かせるものもあると思っている。
ただ、事業を継続してほしいという声が強いようなら、検討は必要かもしれない。
交流2-1 多久市 中央中学校校区の取組
(発表者 多久市立中央中学校 教諭 馬場 渉)
発表の概要
1 研究テーマの設定
研究主題は「人間力形成のための異校種間連携の在り方を探る、子どもの『学び』と『心』の強化」。
人間力を「社会の形成者としての自覚を持ち、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」ととらえ、
(1)思考力・判断力や国語力の育成
(2)基本的な生活習慣の再建
(3)学習習慣の形成
(4)心の成長
の4つの視点から、複数の小学校間や小学校と中学校が連携した研究や取組を進めている。
2 研究・実践の推進体制
校区内の研究計画の立案・推進を図る「企画部会」と、実際に研究・実践を進めていく「授業部」、「生活習慣部」、「連携活動部」を組織してきた。
今回、新たに「学校支援・振興プロジェクト推進協議会」を設置し、企画部会と連携しながら、課題解決を進めており、このメンバーは企画部会、各校PTA代表、県教育委員会、市教育委員会で構成している。
3 これまでの取組状況
授業部では、校区としての国語力、指導方法や授業内容の系統性などについての研究を行っている。
生活習慣部では、「くらしのアンケート」の実施・分析や、「ますお運動」に取り組んでいる。これは「まず、朝ご飯」「すっきり頭 早寝早起き」「親子で親しむ読書の時間」の3つの取組である。また、「確かな学力」を身につけるには、その土台に学習規律や学習習慣の定着が必要なため、「ふでばこ」、「かつお」といった各校共通の合い言葉をもとに、学習規律の徹底を図ってきた。
今年度は、校区内全職員が参加する授業研究会を2回開催し、指導方法や児童・生徒の学習規律などについて意見交換をすることで、共通理解のもと、課題を見いだし、小・中学校の意思疎通を図ってきた。
他方、推進協議会では、PTA代表から、「家庭学習や生活習慣を定着させたいが、どうしてよいか分からない」との意見が出ていたので、家庭での子育て実践例を募集して紹介したり、校区内で最低限共通した課題、例えば「漢字と算数と日記などを出してはどうか」という話し合いになり、実践につなげてきた。
連携活動部では、児童・生徒間の交流、児童・生徒と教師間の交流などを行っている。
小学校間の交流として、3小学校の5年生交流会と6年生交流会を年2回ずつ実施し、中学校入学前に小学校の枠を越えてお互いを知ることで、仲間意識を育て、入学する前の不安を取り除いている。
小・中学校間交流では、中学生が小学校に出向き、5年生にトイレ磨き指導を行ったり、吹奏楽部が夏休みに鼓笛隊の演奏指導に行った。さらに、中学校の新入生説明会では、生徒会役員が中学校の生徒会活動について説明を行った。
児童・生徒と教師間の交流では、今年度は英語のTT、数学、理科の出前授業を行った。
その他、理科の自由研究や美術の作品など展示物を定期的に回して鑑賞するなどして、学校間の交流を図っており、今後は、児童・生徒が同じ教室でともに学べる授業づくり、小学校教師による中学校での授業や、生徒指導への協力なども考えていく。
4 成果と課題
成果としては、研究組織を確立し、研究内容についても方向性が見えてきたこと。また、研究を深めるための環境整備もできた。
さらに、さまざまな交流活動の継続により、教職員の小中連携への意識が高まり、児童・生徒理解も深まってきた。児童・生徒にとっても、小学生は中学校への不安を軽減できたようであり、中学生は小学生への思いやりの気持ちを持って接しているようで、相乗効果をもたらしている。
他方、課題としては、「国語力」育成に向けた具体的な研究内容の設定や、家庭や地域を巻き込む方法論など、なかなか解決策の見えない課題への「具体策」であり、来年度以降、検討を深め、取り組んでいく。
質疑応答
Q 小中連携に関して、出前授業や研修会、意見交換会などの開催、それらをコーディネートする業務など、新たな負担になるのに、それに見合うだけの意味がないなどといった課題はないか。
A 最初の頃は、自分自身、負担に感じたこともあったが、取組を進めていく中で、子どもたちが変わっていくなどの成果もみられ、また、小学校の授業をみて中学校の教師にとってむしろ参考になると思えることも多いなどの実感がある。
実際にやってみて、こうした成果が感じられることが、多少の負担はあっても継続していこうという取組の必要感につながっている。
Q カリキュラムの調整など難しい面もあるし、人が変われば継続しないなど、取組が点で終わってしまうことはないのか。
A 多久の場合、特徴的なのは、組織づくり。各校横断的な部などの組織をつくることは、他地域でも似たような例があると思うが、そこに部長や事務局をおいて、学校を超えた役職とし、市の教育委員会と連携して動いている。
そうした組織づくりが、継続のための一つの仕掛けや工夫かもしれない。
交流2-2 神埼市教育委員会の取組
(発表者 神埼市教育委員会 指導主事 馬原俊浩)
発表の概要

1 取組の沿革
神埼市では、今回のプロジェクトに市内全小・中学校が参加している。
市教育委員会が中心となり、各校の校長、地元の有識者、大学、県教育委員会で「神埼プラン運営委員会」を組織しており、
○ 市内各校の特色ある学校づくりを支援し、それを集約して市の共有財産としていくこと
○ 市内全校で最低限の教育目標を統一し、達成に向けてともに取り組むこと
の二つを中心課題としている。
つまり、確かな学力などを支える基礎・基本や学習規律を土台に、学校独自の取組や財産を形成していくという考え方。
2 これまでの取組状況
神埼プラン運営委員会は2ヶ月に1回程度の割合で開催している。市全体の取組が一体となるよう、市教委が神埼プラン運営委員会、市内各地区の学力向上推進連絡協議会、各学校の実践をコーディネートしている。
また、県教育委員会からは、会議への参加はもちろん、各校の校内研究会への講師紹介や講師としての支援、プランに関する取組の広報なども行ってもらっている。
このような中、これまで、各校の特色づくりのための校内研究等の支援とともに、市内で統一した授業中の学習規律の目標設定、市内共通の学習の基礎・基本としての数値目標の設定などを行ってきた。
また、次回の運営委員会では特色ある学校づくりの本年度の成果を振り返るとともに「教師として備えるべき基本事項の策定」を行う予定である。
3 来年度に向けて
来年度、神埼市では
(1)「神埼プランの一層の推進」のための保護者や地域住民、教育委員会等の共通目標の設定
(2)「授業力向上」のための實松塾(教師塾)の設置や授業力コンテストの開催
(3)「地域連携」による学力の向上等のための土曜塾の開催や、地域住民からの教材公募、授業ボランティアの育成
などを柱に、神埼市の独自の教育の確立に向けて取組を深めていく。
これまでの見方・考え方から一歩、抜き出した教育の確立へ向け、「学校のための保護者・地域中心の会議」、「機会均等から選抜研修へ」、「学校教材への学校の外からの新しいアイデアの導入」、「ボランティア・ティーチャーの育成」などといったねらいをもって取り組んでいきたい。
質疑応答
Q 教育委員会の目標をつくるということだったが、具体的にはどのようなものが考えられるのか?
A 施設や設備の整備などといったハード面を思い浮かべがちだが、機能など、ソフト面を考えている。例えば、「学校から相談や問題提起があったときに、すぐに対応できたか」とか、「学校課題の解決へ向け、必要な支援や助言を適切に行うことができたか」など。
Q 「学校のための保護者・地域中心の会議」とは、どういうことか少し詳しく教えてほしい。
A これまで、いろいろな連携活動を進めてきたが、多くは「学校発」で、学校の外にいろいろとお願いするということが多かった。しかし、本来、教育を考えるうえで、保護者や地域により主体的に担ってもらうことが理想。
このため、この会議では、「保護者・地域発」をコンセプトに、学校にも、他の保護者や地域住民にも、いろいろなリクエストやサジェスチョンを行っていく組織をイメージしている。
Q いろいろな取組を考えておられて発想はすばらしいが、誰がどうやっていくのかは疑問。ヒトやカネの制約がある中、本当にやれるのだろうかと感じるし、学校では、課題が生じるたびに次から次にいろいろな取組が入ってきて、それがうまく行かないとまた別の取組が、という悪循環があるように感じる。
A 予算的な裏づけなどはできているし、何もないところに誰かにお願いするという取組ではない。例えば、来年度の取組の中心に、地域との連携があるが、ここは社会教育の事業である地域連携コーディネータや人材バンクを活用していく。
いろいろな制度や事業が、それぞればらばらに乱立しているから、ある局面からみると不足や資源の制約が目立つが、他の分野をみてみると埋もれているものも結構多い。そうした、「組み合わせる」という視点で取り組んでみると、解決できる課題も多いし、全てが学校などにしわ寄せがいくというものではないと考えている。
また、学校側に対しても、様々な資源を動員しながら取組を進めていく中で、学校も一緒になって取り組んでいただくというような視点で考えている。
お問い合わせ先
佐賀県教育庁 教育政策課
メールアドレス: kyouikuseisaku@pref.saga.lg.jp
